第111話「鏡の欠片を探せ(2)」

「いたたた!ここ、ここにある!」
「ここ?ここなの?」

あれから彩乃達は休み時間の度に鏡の欠片を探して学校内を歩き回っていた。
ある時は花壇の土の中。またある時はトイレの鏡の中。時には思いがけない場所でも発見した。
そして現在は放課後。彩乃達はプールの中を制服が濡れるのも構わずに探し回っていた。
まだ五月の末であるこの寒い季節にプールに入るのはあまりにも冷たかった。

「いたたた!うう、この辺!」
「ここ?」
「あっ!何かあるぞ、これか!?」

田沼がプールの中に落ちていた鏡の欠片を見つけ、三人は水から上がると一息ついた。

「ふぅ〜、あー寒い。」
「待ってて!タオル貰ってくる!」
「あっ!透ちゃん、私が……!」
「……行っちゃったな。」
「……うん。」

唯一プールには入らずに、上から虫取り網で中を探していた多軌だけが濡れていなかった為、真っ先にタオルを借りに職員室に行ってくれた。
二人っきりになった彩乃と田沼は、一心不乱になって探し回ったせいで乱れた呼吸を整えながら多軌を待つことにした。

「……あ、ありがとう。田沼君……」
「はは、取り憑かれてるのは俺だぞ。俺の為でもあるんだし。」

そう言って薄く笑う田沼に、彩乃も釣られて口角を吊り上げて笑った。

「――夏目はこんな想いをすることや、あんな恐いものを見ることがよくあるんだな。」
「……うん。いつもうまく伝えられなくてごめん。恐いとか、不安だとか、そういうのは……伝えるのが難しくて……」
「――ああ、そうだな。」

それが大切な相手なら、大切なだけ、相手を想うからこそ言えなくなってしまう。

「……難しいなぁ……」
ガサリっ
「おいガキンチョ共!」
「わあタヌキ!?」
「……と思ったらポン太か。」

突然茂みから現れたニャンコ先生に驚く彩乃と田沼。
すると彩乃の右目が微かに痛み出した。

「……んん?目が痛い……けど……?先生何か持ってる?」
「ああ。見るがいい。」
「「うわぁーーーっっ!!??」」

そう言ってニャンコ先生が見せたのは、殆ど元の形に戻っている鏡だった。
それには流石に驚きすぎて彩乃と田沼は疲れているのにも拘らずに大声で叫んでしまったのであった。

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