第161話「結成、夏目組」

「今宵は『妖光の月』といって、酒の美味くなる夜。夜に向けて昼間から集まり酒を飲む事となったのですが、何の縁だか夏目様を知る妖達が顔を揃えまして……そこで『夏目様を偲ぶ会』を八ツ原近くのボロ神社で開催する事となり、お迎えに参ったのです。」
「……はあ……」

奴良組から強制的に連れ出され、彩乃は中級達からそんな説明をされた。
連れてこられた神社には既に多くの妖達が集まっており、全員彩乃の知り合いだった。
そんなこんなで彩乃は半ば強制的に妖達の集会に参加することになったのだった。

「遅いのであります。相変わらずドン臭いのであります。」
「こっちだこっち。私の横においで。」
「ささ、夏目の姐御!」
「真っ昼間から飲みあかしましょう!」
「……一応言っとくけど、未成年だから飲めないからね。」
「なんだい、相変わらず固い奴だね……」
「紅峰まで来てたんだ……」

以前リオウの一件で知り合った紅峰や多軌の呪いの一件で知り合ったちょびなど、彩乃と顔見知りの妖怪達が既に集まって飲みあかしていた。

「彩乃ちゃん!……はあはあ……やっと追い付いた……」
「彩乃さん!ご無事ですか!!」
「リクオくん。氷麗ちゃん……二人共追い掛けて来てくれたの?」
「そりゃ、心配だし……」
「ありがとう。」

わざわざ彩乃の身を案じてついてきてくれた二人に感謝すると、ガサリと近くの茂みが揺れた。

ガサリ
「あ……子狐。君も来てくれたの?」
「えへへ……お酒は飲めないけど……賑やかで楽しいね。夏目、人はこんな風に集まった時、どんなことして遊ぶの?」
「え?」
「ほお」
「私も聞きたいね。人の子の間ではどんな遊びをするんだい?」
「んー……どうかな……トランプとか?野外だと確か鬼ごっこや陣取り……影踏み鬼とか……」
「影踏み鬼?面白そうだね。」
「そうだ、飲めぬ夏目様に付き合って、その影踏み鬼とやらをやろう!」
「えっ!?ちょっと待って、やるなんて一言も……」
「よし、やろうやろう!」
「彩乃さんがやるなら私も参加するわ!」
「え、氷麗!?」
「夏目様!いかなる遊びなのですか!?」
「…………」

何やらおかしな事になった。
子狐の何気ない一言で影踏み鬼をすることになった彩乃は、渋々といった感じでルールを説明するのだった。

「えっと……鬼ごっこは知ってる?」
「「うん。」」
「その要領で『影を踏まれた者』が次の鬼になるの……たぶん、基本は鬼に影を踏まれないよう逃げ回る遊びかな。物陰に隠れたり姿勢を低くして鬼をかわすの。但し、日陰に入っていいのは五秒までで、それ以上は反則ね。」
「成る程ねぇ。しかしそれだとどうやって終わらせるんだい?」
「それが……わからないの……いつも同年代の子供達が遊んでいたのを遠くから見ていただけで、やったことはなくて……」
「何!?」
「じゃあ夏目も僕達と同じで初めてなんだ。」
「そうだよ。」
「――ではこうしよう。影を踏まれた者はその場で失格とし、全員の影を踏めたら鬼の勝ちと致しましょう。」
「それじゃあ、範囲は……この神社敷地内にしよう。鬼は……じゃんけんで決める?」
「ちょっと待て!人の手を持っていない者はできないぞ!」
「ああそうか。じゃあしりとりとか?」
「成る程。ではそうしよう。」

******

「ぐぬぅ……何故私が鬼など……」
「先生が一番最初に負けたんだからしょうがないでしょ?」
「くそう。絶対全員捕まえてやる!!」
「じゃあ始め!」

結局、しりとりに負けたニャンコ先生が鬼をやることになった。
彩乃が開始の合図をすると、みんな一目散に散っていく。

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