第234話「夏祭りは終わる」

「あっ!いたいた。彩乃ちゃ〜ん!」
「透ちゃん。みんな!」

リクオが人間の姿に戻ってからすぐに、彩乃たちは多軌たちと合流した。
祭りの目玉であった花火が終わり、大勢いた人混みの中にもちらほらと帰ろうとする人たちもいる。

「大変だったね彩乃ちゃん。奴良くんも大丈夫?」
「「え?」」
「靴擦れして歩けなくなった上に、奴良くんが熱を出して休んでたんですってね。」
「具合悪かったんなら早く言わなきゃ駄目だぞ。奴良。」
「え……あの……?」

多軌と田沼の話に彩乃とリクオは訳がわからずに、戸惑ったように顔を見合わせた。
すると彩乃もリクオも少し前の告白のことを思い出して慌てて顔を逸らした。
そんな彩乃とリクオの様子に多軌は不思議そうに首を傾げながらも話を続ける。

「彩乃ちゃん、もう足は大丈夫?奴良くんも早く帰って寝なきゃ。一人で帰れる?」
「え、あの、透ちゃん?」
「大丈夫ですよ多軌さ……多軌先輩!リクオ様……奴良くんは私が家まで送り届けますから!」
「え?氷麗?」

リクオの隣に立ってそう言う氷麗は、リクオと彩乃と目が合うとにっこりと微笑んだ。
そのしぐさで何かを察した彩乃たち。
どうやら氷麗が上手いこと誤魔化すためについた嘘のようだ。

(えっと……つまり私が靴擦れして、リクオくんが熱を出して休んでたから遅れたってことになってるのかな?)

多軌の言葉から察するとそういうことなのだろう。
彩乃は話を合わせることにした。

「うん、もう大丈夫。みんな迷惑かけちゃってごめんなさい。」
「いいんですよ。それよりも花火見れました?」
「花火……!?」
「わわっ!彩乃さんどうしたんですか!?顔が真っ赤ですよ!」
「やっ!なな、何でもない!」
「まさか夏目も熱があるんじゃ……」
「違う!本当に何でもないから!!」

花火という単語でリクオからの告白を思い出してしまった彩乃は、わかりやすいくらい真っ赤になっていた。
それにより氷麗や田沼に心配され、彩乃は今はそっとしておいて欲しい気持ちでいっぱいだったのであった。

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