第74話「助っ人登場?」

「どうしてみんながここに……?」

「俺達はこの辺りで沢山の妖気を感じて、気になって様子を見に来たんだ。」

「夏目こそどうしてこんな所にいるんだ?」
「人間の娘がこんな時間に出歩くのは危ないぞ。」

突然現れた三羽鴉達に驚く彩乃。
彼等の偵察範囲は浮世絵町の筈なのに、何故ここにいるのかと問えば、黒羽丸は様子を見に来たのだと言う。
それに彩乃は納得し、簡単に事情を説明した。

「――と、いう訳なの。」
「成る程な。人間を襲わせる訳にはいかない。若に報告したいところだが……どうやらそんな時間もないようだな?」
「うん。もういつ行動してもおかしくなくて……」
「だったら、私達で止めるしかないだろう。その『主』とやらがいないのだから……」
「あ、そのことなんだけどね……」

彩乃は自分の側にいる黒猫が実は『主様』であることを話した。
友人帳に主様の名があること、名を返せば封印が解けて元に戻ることを……

「――成る程な。だったらさっさと名を返せばいいんじゃないか?」
「そうしたいのだけど、肝心の名がわからなくて……紅峰は知らない?」
「残念ながら私は通称の『主様』としか……」
「依代の姿では友人帳も名を検索(さが)してはくれない。どうするつもりだ?」
「……あの中に名を知ってる妖がいるかもしれない。」
「皆の者行くぞ!!」
「!!」

彩乃達がひそひそと会場近くの茂みで話し合っていると、そんな掛け声が聞こえた。

「――まさか、人を襲いに!?」
「トサカ丸、ささ美。我々だけで止めるぞ!」
「なっ!正気かよ兄貴……応援を待った方が……」
「そんな時間は無い!!」
「待って!」

黒羽丸が錫杖を持って妖達の群れに突っ込んで行こうとするのを、彩乃は手を掴んで止めた。

「どうした夏目?早くしないと……」
「待って黒羽丸、皆!……私が説得してみる。だから戦わないで。」
「なっ!?」
「正気か彩乃!?喰われるぞ!!」
「……やらせて欲しい。お願い。」
「夏目……」

真剣な眼差しで皆を見つめる彩乃。
誰もが危険だと止める中、彩乃は頑なに折れなかった。
自分の意志を曲げることをしなかった。

「……危険だと判断したらすぐに止めるからな。」
「なっ!斑!?お前何を言って……」
「勝手にしろ、阿呆。」
「うん、ありがとう。先生!」

以外にも一番に彩乃の背中を押したのはニャンコ先生だった。
その事に黒羽丸は焦る。
そうしている間にも彩乃は会場の方へ向かって行ってしまった。

「――何故あんなことを言ったんだ!夏目が喰われてもいいのか!?」
「……止めたところであ奴は自分の意志を曲げん。……レイコに似て頑固だからな。」
「お前……」

先生を驚いたように見つめる黒羽丸。
今は、彩乃を信じるしかないようだ。

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