第84話「その頃女子は……」

「……二人共遅いねぇ〜」
「そうですね。何かあったんでしょうか?」
「今頃滅されてるかもしれんぞ?」
「ええっ!?」
「こらニャンコ先生!」

浴衣に着替えた彩乃と氷麗とおまけのニャンコ先生は、先に着替えてロビーでリクオと名取を待っていた。
しかし、何時まで経ってもやって来ない二人に、彩乃と氷麗は心配そうに時計を見ていた。
すると、暫くして名取が男の脱衣所から出てきた。

「あっ、名取さん。遅いですよ!」
「ごめんごめん。」
「……あの、リクオ様は?」
「……ああ、彼なら後から来るんじゃないかな?」
「そう……あっ!リクオ様!」
「あ……氷麗……彩乃ちゃん……」
「……?(リクオ君、何だか元気ない?)」

名取から少し遅れてやって来たリクオに嬉しそうに駆け寄る氷麗。
しかし、何だかぼんやりとしていて、さっきまでと違って元気が無い様子のリクオに、彩乃と氷麗は心配そうにリクオを見つめた。

「……どうしたのリクオ君。何だか元気ないけど……」
「まさか体調を崩されて!?」
「ああ、大丈夫!ちょっとのぼせただけだから……」
「……本当に大丈夫?」
「……うん。」

彩乃の問い掛けに力無く答えるリクオ。
それに彩乃と氷麗はますます心配になってしまう。

「リクオ様、とにかく少し休みましょう。」
「……そうだね。ごめん、僕達先に戻るね。」
「あ、わかった。」

彩乃が頷くと、リクオと氷麗は自室に戻って行った。

「……大丈夫かな?リクオ君……」
「まあ死にはせんだろ。」
「……彩乃、私達は部屋に戻る前に少し遊ばないか?」
「……へ?」

そう言う名取の手には卓球のラケットが握られていた。

「……卓球?」
「そう。学生時代以来だから、久しぶりにやってみたくてね。」
「……いいですけど…」

にこにこと子供のように楽しそうにはしゃぐ名取に、彩乃は唖然として頷いた。
いつもは落ち着いた雰囲気の人だから、こんな風に子供のようにはしゃぐ姿は何だか新鮮だった。

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