02

「アデリーヌじゃない!」
「ナタリー!」
フィオーネ姫の提案でエラフィタ村へとやって来たアラン。
ジョセフとアデリーヌがエラフィタ村出身であるため、エラフィタまで迷うことなく来ることができた。
村で友人を見つけたのか、アデリーヌは彼女と同い年くらいの少女の元へ駆け寄った。

「あら、アデリーヌちゃん」
そして、ナタリーと呼ばれたアデリーヌの友人らしき少女の横には綺麗な村娘が。

「ボンジュール、マドモアゼル」
アランは名前も知らない村娘に手を差し伸べた。
「良かったら村一番のお店でお食事はいか……」
アランが全てを言い切る前に、耳に衝撃が走る。
「はいはい、ナンパはそこまでにしようねー」
アデリーヌだった。アデリーヌがアランの耳を引っ張っているのだ。

「ノンノンノーン!!」
アランの悲鳴が村中に響き渡った。

「やめろ、アデリーヌ!俺はあの村娘とトレビアーンなことを……」
「だ……誰かっ、助けてくれぇ!」
アランの悲痛な叫び声に別の男の叫び声が重なった。
アランとアデリーヌは一瞬で切り替えて声のした方へ向かった。

「あんたは!」
急いで村に駆け込む木こりと、木こりを追う……。

「レオコーン!!」
レオコーンがここにいるということは彼もルディアノがどこにあるのか知らないのだろう。
「お前には何もしない。安心しろ……」
「ウソこくでねぇっ! オラ、森の中でアンタのこと探してる女の魔物に出会っただ! 真っ赤な目を光らせながら『我が下僕、黒い騎士を見なかったか』ってよ……。アンタ、あの魔物の下僕なんだろッ!?」
「魔物……?」
木こりの言葉に反応したのはレオコーンだけではなかった。

「ねえ、木こりさん。その魔物って赤い目をしていなかった?」
フリアイが木こりに尋ねる。
「た、確か赤目だったべ……」
「そう……」
アランはフリアイが意味深な笑みを浮かべるのを見逃さなかった。

フリアイは自分のことを何も語らないが、やはり彼女には何かあるのだ。


「レオコーン、あなたと話しがあるから、少し外へ行きましょう」
「え、ちょっと、フリアイ?!」
「ああ、あなた達も聞きたいなら一緒に来て」
フリアイに言われるまま、外へ出る一行。



「まず、レオコーンに一つ聞きたいんだけど、あなた、黒薔薇の騎士でしょう?」
「黒薔薇の騎士……。確かにルディアノではそう呼ばれていたが……?」
なぜフリアイがレオコーンの二つ名を知っているのだろうか。
(確か、フリアイはルディアノ王家の血縁者だって言ってたよな)

「そう。やっぱりね。あなたのことは知っているわ。ルディアノ一の騎士」
フリアイはさらに話を続ける。
「そして、あの木こりが言っていた魔物は間違いなくイシュダルのことね。あなたはイシュダルを退治しに行ったのだけど」
フリアイはその先を言わなかった。
「ちなみに、ルディアノへはここから北方向へ行けば着くわ。だから私と一緒に……」
「よかろう! ならば北へ進むことにしようではないか。真実を掴むためにな!」
フリアイの言葉を最後まで聞かず、レオコーンは北へ向かって馬を走らせた。

「あ、ちょっと!」
フリアイはため息をついた。
「もう……黒薔薇の騎士と一緒ならイシュダルも……」
最後まで言い切ることなく、フリアイはその場に倒れた。

Honey au Lait