一週間前、俺とヴァンはとある悩みにようやく答えを導き出した。

「なぁ、ヴァン。来週ってハロウィンだよな」
「ああ。何を着てもイケメンな俺とアランだが、何といってもハロウィンだ！超スペシャルイケメンファッションに身を包んで、マドモアゼルたちを口説けと神からのお告げがあった！」
　そう。来週で10月が終わる。10月最終日、それはハロウィンでもある。
　ハロウィンとなれば、人々は仮装を楽しみ、お菓子と楽しい気分を分け合う。特に子どもたちが笑顔を見せるその日一日は、守護天使としても嬉しくなる。やっぱ、子どもたちには笑っていてほしいしな。
　それに、ハロウィンのお祭り効果でマドモアゼルたちはそれはそれはセクシーな布で身を包む。あぁ〜、フリアイちゃんはどんな仮装をするのかなぁ〜。今から楽しみだぜ〜。

「仮装、何にする？ハロウィンと言えばウィザード。ってことは、俺たちもウィザードの恰好をするか？ついでにファントムマスクあたりをかぶってさ」
「俺もそれを思ったぜ！やっぱアランとは気が合うな！」
「ウィザードは仮装の定番だよな〜。定番だけに、面白味が足りないような。ちゅーか、思ったんだけど、ウィザードの俺たちがウィザードの仮装しても、普段と変わんねーな」
「それな」
　俺の発言に頷くヴァン。イケメンウィザードの俺たちは、24時間365日、いつでもウィザードだ。ウィザードの俺たちがウィザードの仮装って、ぶっちゃけ意味ねーよな。
　ちゅーか、それってもはや仮装じゃない。ただの通常運転だ。

「だけど、俺たちもかっこいい仮装をしてマドモアゼルを口説きたいよな」
「ああ。ハロウィン効果で浮かれたマドモアゼルたちなら、絶対に俺たちとお茶に行きたいって思うはずだ！」
「いっそソーサラーの仮装でもするか？」
「ソーサラーなぁ。ウィザードとあまり変わらない気もする」
　ヴァンの意見ももっともだ。
　どうしたものか。一か月くらいから悩んでいることだが、全くアイデアが出てこない。ハロウィンはすぐそこだというのに。

「まず、魔法職の仮装って枠組みがいけないんだと思うんだな」
「うんうん。それもそうだ。ヴァン、いいこと言ったな！ちゅーか、そもそも男物の仮装っていう常識を取り払うべきだ」
「常識にとらわれないアラン、魔法(マジ)でかっこいいぜ！」
「ははははは。なんたって俺はイケメンウィザードだからな」
　あ〜。誰よりも俺のことを褒めてくれるヴァン is 魔法(マジ)SAIKO!!!!!


「思ったんだけど、ハロウィンって仮装するイベントだろ？ってことはさ、俺たちがマドモアゼルの仮装をすればいいんじゃね？」
「マドモアゼルに仮装？」
「つまりは女装ってことだな」
「！！」
　我ながら超やばいアイデアだと思う。今日の俺、最強じゃね？
「その手があったか！！俺たちがマドモアゼルになるんだな！！やべぇ、考えただけで興奮するぜ……」
「俺もだ、ヴァン。そうと決まれば早速女装のための道具を買いに行かないとな。なに、店員には『彼女へのプレゼント』とでも言えばいいだろ」
　俺もヴァンも顔立ちは超いい。それに、俺にはメイクアップの技術もある。マドモアゼルの仮装だって完璧にこなしてやる……！！




　そして迎えたハロウィン当日。
　俺もヴァンも超絶美人へと生まれ変わった。やっぱ俺のメイク技術は最高だな。
「やべぇ、やべぇよヴァン。お前超綺麗だよ……。こんな美人を前に口説かないとか、男じゃねーわ。どうしよ、今すぐお前を口説きたくなっちまったぜ」
「アランだって超美人じゃん。お前を口説かないなんて俺の流儀に反するぜ。嗚呼、今すぐアランを口説きたい……」
「ちゅーか、ヴァンのことを他の男が口説くんじゃないかと思ったら、俺、耐えきれないんだけど」
　ヴァンのことを世界一知っている男はこの俺だ！ヴァンに相応しい男は俺しかいないんだよ……。

「はぁ。お前のその美しさは罪だ。もう今日は外に出るの、やめようぜ？」
「アラン……！！」
「おっと、今日の俺はイケメンウィザードのアランじゃなくて、美しき魔性の女、アリアだ」
「俺だって、今日はヴァンじゃなくて、健気に働く女のヴァンデレラだ」

　俺達の美しさに、今日このハロウィンは禁断の色に染まる。ああ、やっぱ俺たちの美貌って罪なんだな。


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アさんとヴァン君は仮装ならぬ女装をすると思いました。そして二人だけの世界に入るんですよ。書きながら表情筋がフィナーレしたのでアラヴァンは罪深いですね。今さらですが、アラヴァンだけでなくウィザードフォーのハロウィンにすればよかったかな、とも思いますが、これ以上表情筋をフィナーレさせるわけにはいかないので、やっぱりアラヴァンオンリーで良かったんだと思います。

何気にアラン一人称で書いたのが初めてだったので、なんだか新鮮でした。