03

「ねえ、あなたの名前を教えてほしいな!!あたしはアデリーヌだよ!!助けてくれてありがとうございました!!」
「アラン・ベタンクールだ。魔法使いやってる」
「フリアイ・ベルナディスよ。職はパラディン」
「孫を助けていただきありがとうございました。感謝してもしきれぬぞ。わしはジョセフ・ブルレックと申します。これでも現役で戦士をやっておりまして」

フリアイがチンピラ集団を倒し、二度と酒場に来るなと脅したおかげで、チンピラたちは酒場を去って行った。彼らには宿屋側もとことん困っていたらしく、ルイーダを始めとして宿屋の従業員一同はフリアイにひたすら感謝の言葉を述べたのであった。

「あたしはまだ職を持ってないけど、これからダーマに行って僧侶になるつもりなんだ!!旅の資金をもらえないかなって思って黒騎士退治に行こうと思ってて」
人間が正式に職を得るにはダーマ神殿に行かねばならない。そしてその職を得られるのは14歳以上という条件が付いていた。

「へぇ、じゃあアデリーヌもジョセフも黒騎士退治を志願しているんだな」
「まあ退治に行くのはわしだけですがな。可愛いアデリーヌを危険に晒すわけにはいきませぬ」
「もう、お爺ちゃんったら年なんだから無理しちゃだめでしょ!あたしは戦えないけど、回復魔法ならちょっとは使えるから、一緒に行くんだからね!!」
アデリーヌは正式な職を経ていないが、さっきもべホイミを使っていたのをアランは見ていた。これからダーマで職を得るということは、アデリーヌはおそらく14歳。その年で中級魔法が使えるの人間はなかなかいない。

「アデリーヌは回復魔法の才能があるんだろな。さっきもべホイミ使ってただろ。すげーな。独学?」
「ははは、アデリーヌは心優しい娘ですから、傷ついた他人のためを思ってわしの持ってる魔導書を使って毎日練習しているのです」
ジョセフが高らかに笑った。

(とんでもない爺馬鹿だなこいつ……)
アデリーヌのことが本当に好きなのだろう。さっきからジョセフはアデリーヌのことを褒めてしかいない。多くの人間は謙虚になって自分の子を低く言うが、アランはそれを快く思わなかったので、むしろジョセフの孫自慢は微笑ましいとすら思う。
ジョセフの場合は度が過ぎているような気もするが。

「魔法使いの俺に、パラディンのフリアイ。戦士のジョセフと回復魔法を使えるアデリーヌ」
アランは独り言のように呟く。
「うん、バランスのいいメンバーだな」
フリアイとジョセフが前衛で魔物を倒していく。アランは彼らを援護するように攻撃魔法や補助魔法を使えばいい。パーティーの傷はアデリーヌが回復してくれる。

「なあ、ジョセフ、アデリーヌ。せっかく目的が一緒なんだし、一緒にパーティー組まねえ?」
「え、いいの?!」
「報酬のことなら俺は別に王様からの報酬には興味ないから、三人で山分けするといいぞ」
アランの目的は報酬ではなく、黒騎士を退治することで生じる星のオーラだ。それに、こうして報酬は皆に譲ると言っておけば、三人がアランに感謝して更に星のオーラが発生するだろう。少し卑怯な気がするが、これも天使界へ帰るためだ。

「あら、報酬なら私もそんなに興味ないのよ。だからあなたたち二人で全部持って帰るといいわ。ただ」
「ただ?」
「無事に黒騎士を退治できたら、少しあなたたちに協力してもらいたいことがあるの。そうね、報酬を譲る交換条件ってことでいいかしら」
「協力してほしいこと?フリアイ、何か困ってるの?」
アデリーヌがフリアイに尋ねる。フリアイは笑うだけで何も言わなかった。

「今はまだ話せないわ。これは黒騎士と渡り合えるようなあなたたちにしかお願いできないことだから」
フリアイの言葉は気になるが、フリアイが困っているならアランは全力を尽くして彼女の力になりたいと思う。フリアイよりも弱い自分にできることは少ないかもしれないが。


酒場にて3
(パーティー結成!!)

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転生PTはゲーム通りに皆セントシュタインで仲間になりました。転生は愚神礼賛ほど暗くないようにする予定ですが色々後味悪い展開も入るかも。愚神礼賛と転生読んで暗い展開に唸るようになったら中和剤としてゲシュタルトを読んだら大丈夫かと思われます←
基本的に転生は主人公が明るいけど周りが暗いパターンになりそう。
こちらは不定期更新ですがよろしければお付き合いいただけたらと思います!

Honey au Lait