▼ 16 学校に復帰してから、職員室に呼び出されることが多くなった。プロデュースのこととか、ドリフェスの企画とかについての話ばかりだけど、明らかに以前より仕事量が増やされている気がする。もしかしたら、仕事を多く入れることで私に余裕を作らせないようにしてるのかもしれない。なんだか必死な気もして椚先生の前で笑ってしまい見事に怒られた。予想以上に長引いてしまった椚先生の話を終え、私は教室に戻った。お昼休みだったけど、みんな殆ど食べ終えてて仕方なし一人でお弁当を広げる。先ほど貰った今度の流星隊の企画書を片手に私はぼっち飯を始めた。 「みょうじ!遅い昼食だな!」 「あ、千秋くんちょうどいいとこに、今度のライブの話なんだけど」 「それか!今回はみょうじがプロデュースしてくれるのだな!」 千秋くんは、私の手から企画書を取り前の席に座る。真剣な眼差しで目を通すと、「ここは仙石が……」などと一人で考え出した。私は、食べているトマトを飲み込んで「待って、口で言うんじゃなくて書いて」とペンを渡す。ありがとな、と言うと早速書き出した。千秋くんは、周りをよく見ている分、誰をどう動かすかを知っている。こういうところが凄くリーダーらしい。 「あれなまえちゃん、守沢くんと何してるの〜?」 「今度のライブの企画書見てる」 今ちょうど教室に戻ってきたらしい薫くんは、私と千秋くんを見つけるとふらりと寄ってきた。「へえ、流星隊もプロデュースしてるんだ」と真剣に企画書を眺めている千秋くんを物珍しそうに見る。すぐさま私の方を向いて「その玉子焼き美味しそう〜あーんして」なんて言ってくるから「はい、あーん」と自分の口に入れてやった。残念、とか言いながらちっとも残念そうな顔をしていないから放っておくことにした。その会話で薫くんが近くにいることに気づいたのか、千秋くんは少し驚いた顔で「おお!羽風か!どうした!!」と薫くんに絡み出す。その間にお弁当を食べきり、千秋くんのメモが書かれた企画書を見る。わあ、大胆な文字でびっしり書いてある。 「そういえば、UNDEADのリーダーって零さんだっけ?」 「そうだよ〜急にどうしたの?」 「まだUNDEADとあまり関っていないから誰かと思って」 その言葉に次は、UNDEADだねと楽しそうに薫くんは言ってくる。アイドルに戻りたいとは思っていても卒業まではプロデュースを頑張る。昨日、泉くんと約束したのだからしっかりやりたい。私は、「そうだね、プロデュースさせて」と薫くんに笑いかけた。 「話戻すけどこのクラスでユニットのリーダーしてるのって、千秋くんに英智くん、敬人くん宗くん……あと泉くん?」 「俺はリーダーじゃないよ」 不意に後ろから声が聞こえて肩が跳ねる。「瀬名!」と千秋くんが声をかける先には、泉くんがいた。泉くんは、立っている羽風くんの横まで来ると私の顔をチラリと見る。私は思わず目線を逸らしてしまう、昨日の今日でなんだか恥ずかしくなってしまった。あれは、どういう意味だったのだろうか…聞きたいけれど恥ずかしくて帰りも一切聞けず仕舞いだった。 「へえ瀬名くん、リーダーじゃないんだ〜なんか意外」 「今は仮にリーダー的な役割受け持ってるけど、本当はいるの。……学校に来てないけどね」 「え、Knightsってもう一人いるの?」 「はあ?!あんたユニットの基本的な情報も覚えてないの?!」 泉くんは驚いた表情で私を見る。私は、目線を泳がせ乾いた笑いをする。恥ずかしながら今の今まで目先の情報だけでプロデュースをしていた。だから、Knightsのメンバーが一人いないなんて知ろうともしていなかった。気持ちに少しの余裕が出来た今、良く関わっていたKnightsを全然知っていなかったことを少しばかり後悔する。 「まあ俺もメンバーの名前未だに曖昧だし一緒だよ〜」 「羽風のそれは、マジで最低だから」 「だって男の名前なんて覚えてても無駄じゃん」 助け舟を出すように薫くんが私にフォローを入れる。そのおかげで話はその話題からずれてくれた。薫くんに目配せすると、いつも通りの笑みを見せてきた。この人は、本当に女の扱いが上手いというか……世渡り上手というか……。まあ、助けられたのには変わらないから私も笑い返した。私は変わらなければならない。みんなのことを沢山知って、少しばかりのプロデュースをやり遂げたい。チャイムが鳴ったことに気づいて私は、わいわい騒ぐ3人に授業だよと声をかけた。 ← → |