きらきらと宝石のように輝く彼らを見ていることが辛い。
 私は、ステージの袖でファンに笑顔を振りまくアイドルたちを見ていた。素敵なパフォーマンスと歌声、一つ一つが人を虜にするもので、羨ましくて仕方がなかった。私も彼らのようにパフォーマンスしたい、ステージできらきら輝きたい。気づいたら足がステージと反対の方に向いていた。見ていられなかった。慣れなければならないことなのに、悔しさで胸がいっぱいになってしまう。

「お疲れ様。」

 アンコールを終え、ステージから戻ってきた彼らを私はタオルと水を抱えて待ち構える。各々が私の手から受け取りお礼を言ってくる。最後に戻ってきたのは瀬名泉。タオルと水を受け取ると私を見て目を細めた。

「ちゃんと見てたぁ?」

 はっ、と我に帰らされた。そんなに私は呆けた顔をしていたのか。条件反射のように目を逸らしてしまう。焦った私は瀬名くんの言葉に一瞬言葉を失ったが、すぐさま持ち直して返し言葉を探す。

「ちゃんと見てたよ、お疲れ様。」
「……はいはい、ありがと〜。あいつらにもあんたにも沢山言いたいことあるから明日はミーティングだね。」
「うん、分かった。参加するね。」

瀬名くんはそのまま楽屋に向かう。もっと突っ込まれるかと身構えていたけど意外にあっさりと流された。別に詮索されたい訳ではないし、むしろ瀬名くんは私に興味ないだろう。胸を撫で下ろし、瀬名くんの背中を追いかけた。


翌日の放課後、Knightsのミーティングに参加するべくホームルーム終了後すぐさま荷物をまとめた。遅刻したら瀬名くんに怒られる。以前1年生に捕まって遅刻した時に怒られたことがあった。ネチネチと文句を言われ、説教で時間を無駄にしたことを思い出す。いつもの倍以上面倒だったから遅刻する事は避けたい。同じクラスである瀬名くんがまだ教室に居る事を確認すると、私は急いで教室を出ようと出入り口に向かう。

「ちょっとぉ、俺を置いて先に行く気?」
「げっ」
「はぁ?何その嫌そうな顔、チョ〜ウザい。」

 教室の扉に手をかけた矢先、後ろから不機嫌そうに眉間を寄せた瀬名くんが声をかけてきた。別に一緒に行く約束なんてしてないんだけど、なんて小言が口から出そうになったが面倒な事になりそうだから抑えた。私は、愛想笑いをして扉を開けはいどうぞとエスコートする。「行く場所一緒でしょぉ、待つぐらい出来ないの?」なんて理不尽極まりないことを言ってくるものだから、横目で睨みながら「はいはい、待てば良かったですね。」と嫌味ったらしく返してやった。瀬名くんは「うっざ」と私を睨み返してくる。私は無視するようにその視線から避け、ミーティングする予定の教室へと足を早めた。

「なまえって本当アイドルだった欠片も感じないよねぇ」
「えっ、突然の悪口?」

 教室にはまだ誰も来てなくて、私は瀬名くんと机を向かい合わせて座っていた。携帯をいじりこっちを見向きもしないまま、瀬名くんは話しかけてくる。私は、スケジュールのチェックをするために持っていたペンを机に置いて瀬名くんを見た。グラビアモデルをしていたという瀬名くんの顔立ちは、どの角度から見ても綺麗で携帯をいじっている姿もどこか携帯会社の広告モデルのようだった。

「あんた、もうちょっと可愛かったのにね。」

 携帯から目を離して、瀬名くんの綺麗な瞳が私の目を見る。私は、その言葉に動揺して返す言葉も見つけられず瀬名くんの瞳をじっと見てしまった。瀬名くんは、そんな私を目を細めて見るとはぁ、と深いため息をついた。

「ここに来てから顔が怖い。」
「……そうかな。」
「あんたのこと詳しく知っていたわけじゃないけど、テレビでも雑誌でも今よりマシな顔してたよねぇ。」

 「どこであの顔捨ててきたの。」と私の目をもう一度見てくる。私は無意識に自分の手が汗ばんでることに気づく。言い訳は沢山考えつくのだが、全て嘘だってバレてしまいそうでうまく言葉が出てこなかった。誤魔化すように目を逸らして、「気のせいだよ」と乾いた声で笑う。頑なに心を開こうとしない私に呆れたのか、瀬名くんは「あっ、そう。」とタイミングよく来た嵐くんの方に行った。

 瀬名くんは、私にとって苦手な人だ。何かと突っかかってくるし、隙あらば私の手の内を見てこようとしてくる。ただの好奇心なのかもしれないが、思春期の私にはデリケートなこの部分をたかがクラスメイトに見られたくなった。「お姉さま、はじめましょう。」と、つい先ほどきた司君に呼ばれ私もKnightsの輪に入った。瀬名くんの視線を少し感じたけれど、私はあえて目を合わせなかった。
  

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