好奇心もたまには幸せをもたらす02

空気は凍った、気がしたのは俺だけで鬼灯さまは行きましょうと歩き始めた。その後ろで茄子が質問をしているようだが俺の頭はそれどころじゃない。
外に出すってことは引きこもりか何かか...?
数歩遅れて後に続いた俺は、最終的に茄子に引っ張られながら伊邪那美さまの御殿へ向かった。

「なんじゃ、天鼠に会いに来たのか」
「ええ、彼女は今どこに?」
「桃源郷」

鬼灯さまの顔が引きつっていく様を楽しそうに眺める悪趣味な元補佐官さま。悪趣味な方だ。

「冗談じゃ、もう帰って来ておる。そう睨むでない」
「はあ...失礼しますよ。桃源郷に何の用事が?」
「天鼠の頭痛が最近酷いそうでの」
「頭痛が...そうですか。外を散歩させようと思ったのですが必要なさそうですね」

紹介だけして帰りましょう、と言いかけたのだろう鬼灯さまの身体に背後から何かが突撃した。正確には抱きついた、のだが勢いがありすぎる。それなのに鬼灯さまは柱のようにびくともしなかった。