好奇心もたまには幸せをもたらす03

「鬼灯さま、鬼灯さま。お久しゅうございます」
「天鼠さん。廊下は走るなとあれほど言ったでしょう」
「だって嬉しくって。鬼灯さま、全然来てくださらないんですもの」

和風の御殿には似つかわしく見慣れない、現世でいうところのドレスを着た女性は抱きついたまま顔を上げる。お人形さんみたいだと茄子が呟いた。俺もそう思う。

「だから侍女なんて辞めて私と住めばいい。毎日会えますよ」
「この距離感がよいのではありませんか」

わからないといった様子の鬼灯さまの正面に移動した彼女はしばらく胸に顔を埋めていたが、やがて俺たちに気付いて声を上げた。

「彼らは?」
「あなたのことを気になっていたようなので、紹介しようと思いまして。茄子さんと唐瓜さんです。二人とも将来有望な獄卒ですよ」
「は、はじめまして」

あれだけ意気込んでいたが、やはり緊張しているのか照れているのか。
合わせて俺も頭を下げる。