好奇心もたまには幸せをもたらす05

鬼灯さまが頭を撫でながらそう付け足すと、頬を染め嬉しそうにすり寄った。猫に似ているなあと見ていたら、拗ねたような口調で天鼠さまは言う。

「猫は嫌いですの」
「そうなんですか?」
「出来れば二度と見たくもないくらいには」

この出会いから、俺と茄子は昼休憩に時折通うようになった。御殿から出ることはないが、天鼠さまの手料理は食堂の何倍も美味しい。
それから間もなくして、猫との因縁を尋ねてみたが至って些細な問題だった。なぜなら、彼女の嫉妬だったからだ。
鬼灯さまは女性と小動物には優しい。そういった性格から運命の対角線上にいる猫ももれなくということだが、どうも気に入らないらしい。
いじらしいといえばそこまで。でも天鼠さまの嫉恨みは凄まじい。

「周辺の猫は全て排除しましたわ。御殿の塀は隙間なく飛び越え対策も万全。他の使用人は当たり前、よく出入りなさる鬼灯さまにも猫を寄せ付けないというスプレーを全身隈無くかけています」

俺たちにはかけられた覚えがなかったが、それもそのはず。知らぬ間に玄関で済まされていたのだ。
この通り地獄には変人が多いが、鬼灯さまの周りには特に多い。
類は友を呼ぶとはこのことである。