「なまえ殿」
「っうわ!?っなんだ、陸遜殿か…びっくりしたあ」
「ふふ、相変わらずなまえ殿は気配が読めませんね」
そう言って笑う陸遜はやはりイケメンである。
「(こうも顔の造りが違うとなあ…。おまけに性格もヨシときた)…モッテモテだろうな、うん」
「?なにがですか?」
「!あっいや…」
どうやら思っていたことが口に出ていたらしい。陸遜が首を傾げて俺を見る。ああそんな君も素敵だよって俺は馬鹿か。
「な、なんでもないです、気になさらずに」
ははは、と愛想笑いを浮かべる。
この世界に来てから俺の頭はついにおかしくなったらしい。異性より同性のことをかわいいとかかっこいいとか思うようになり、見惚れるようになってしまった。最近は心臓が妙にどきどきするようにもなった。完全に末期だ。もちろん異性にだって興味はある。今だに思わず練師さんや濃姫様の胸元を凝視してしまうくらいだ、というかこれが普通なのだが、男としては。
俺はノーマルだ。決してホモではない。
「(こうなったのは、周りにイケメンが多すぎるからで…)」
あるだろう、同性でも見惚れたりすることが。これはその類だ。
そう、例えば――
「(目の前にいる陸遜とか……)……陸遜殿?」
な、なんでだ、陸遜の顔が真っ赤なんだが。
「(俺なんかしたか…?)り、陸遜殿…?大丈夫ですか」
近付いて目を合わせようとしたら思いっきり逸らされた。うわ地味にショックだ。
近付いたのが悪かったのだろうか、とそう思って俺は謝って陸遜から離れようとしたのだが、何故か陸遜に腕を掴まれてそれは叶わなかった。
「陸遜殿…?」
俺の腕を掴んでいる陸遜は俯いていて、その表情は伺えない。だけど焦げ茶色の髪の毛からのぞく両耳が真っ赤だ。
「っなまえ殿!」
「!っは、はい」
ばっ、と勢いよく顔を上げた陸遜の顔は、やっぱり真っ赤だった。
いきなり顔を上げられたので、急に距離が近くなった気がする。
ほら、端整な顔立ちをしてるからまたどきりとした。
「(つーか肌白いしキレーだなおい)な、何でしょう」
「その…、」
躊躇いがちに、陸遜は意を決したように口を開く。真っ直ぐに俺を見ながら。
「敬語を、やめていただきたいのです」
「……へ、」
予想外なお願いに少し拍子抜けだ。
正直、個人的にはすごく嬉しいお願いなのだが。
「ですが、陸遜殿は、俺より目上の方ですから…」
そう躊躇いがちに言えば、陸遜は
「いいのです、私がそうしてもらいたいんです、…なまえ殿に」
と俺を真っ直ぐ見ながらそう言った。真っ赤な顔で。
やばい、なんだこの人、すごくかわいい…、ってまた俺は変なことを!
…でも、陸遜がそう言ってくれるなら良いのだろう。だから俺は頷いて口を開いた。
「分かりま……、分かった。慣れるまで、少し時間がかかるかもしれないけど」
笑いながら言えば、陸遜はふわりと嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます!………あの、」
「ん?」
「私の事は、呼び捨てにしてくださって構わないですから」
頬を赤く染めながらそう言う陸遜に、またどきりとした。
心臓がばくばくいっている。
「でも、それじゃあ不公平で…だろ?だから俺のことも呼び捨てにしてくれると、嬉しい、な」
なんとか言葉を紡ぎだしたら、思わずぎこちなくそう言ってしまった。さすがに失礼かと思って内心ひやひやしていたのだけれど、陸遜の顔がぱああ、と明るくなっていって、
「!っはい!」
「っうおあ!?」
俺の言ったことが相当嬉しかったのか、気付いたら陸遜にぎゅうう、と抱きしめられていた。
いよいよ心臓が爆発しそうだ。それになんか変な汗も出てきた。本当にどうしたんだろう、俺
「り、陸遜」
「っあ…、」
なんとか平静を装いながら、恐る恐る名前を呼ぶ。
陸遜は照れ臭そうにすみません、嬉しくて、と言ってはにかんだ。
片恋切符を1枚
(両想い行きにはまだ早い)
(なんで陸遜限定でこんなどきどきするんだ…?)