いいおっぱいの日 アズールver.
薄く色づいた桃色の頂きに指を掠める。僅かな刺激も充分な快感に変換されてしまうのか、ひくりと白く細い体が震え、塞いだ口の隙間から漏れ出た甘い吐息が耳を擽って。
「ん、っ、なまえさん、」
「はい」
「ぁ、今日は、ずいぶん、胸ばかり触るんですね…?」
少し舌ったらずにそう言って、アズール先輩は上目遣いに俺を見つめる。もぞもぞと細い太腿を擦り合わせているあたりもどかしいのだろう。まあ、それは下腹部の盛り上がった下着を見れば分かるのだけど。
「…先輩、知ってます?今日何の日か」
「今日…?さあ、……」
先輩の問いには答えず、逆に俺の方から繰り出した質問に、アズール先輩はぱちりと目を瞬かせる。俺よりも先輩の方がそういう記念日を大切にするからか、何かの記念日でしたか?と考える素振りを見せる。何か大切な日を忘れていたらどうしようと先輩は懸命に頭の中のカレンダーを捲っているようだけど、安心してほしい、今日は記念日でもなんでもない。
「今日、いいおっぱいの日らしいですよ」
「………」
にっこりと一言。記念日でもなんでもない、数字に文字を当てはめて作られた日の名前に、アズール先輩はきょとんとして俺を見つめる。その表情がいつもはあまり見せない年相応の男子高校生のものに見えて、ああ可愛いなあと思ったのも束の間。俺の言いたいことを理解したのか、先輩は次の瞬間眉を下げて破顔した。
「っふふ、あはは!なるほど、そういうことですか」
「そういうことです、だから先輩のいいおっぱいをたくさん味わいたいなと思って」
ツボに入ったのか、ふふふと歯を見せて可笑しそうに笑う先輩に俺も釣られて頬が緩む。くく、と喉を鳴らす先輩のくせっ毛に指を差し入れ、細く柔らかいシルバーの髪でくるくると弄ぶ。そうして俺が髪を弄って楽しんでいる間に先輩はひとしきり笑って、細められていたスカイブルーの瞳が俺をやさしく捉えた。
「ふ、っく、ふふ……なまえさん、貴方は本当に変態ですね」
「あ、人のこと言えます?先輩だって相当な物好きじゃないですか」
「さあ、それはどうでしょう。どこかの誰かさんに釣られてしまったのかもしれませんね」
アズール先輩は悪戯っぽく笑って、日に焼けていない、象牙のようなきれいな手のひらで俺の頸を覆う。くいと優しい力で先輩の方へと引き寄せられ、俺はなされるがまま先輩からの口付けを受け入れた。ちゅ、ちゅ、触れるだけのそれを繰り返されたかと思えば、先輩は目を細め、猫のように甘えるように顔を摺り寄せては首筋や耳に熱い唇を押し付ける。
「ん、ン、んぅ、ぁ……、っん」
心地良い快感に身を任せ、先輩から漏らされる甘い声が少しずつお互いの熱を昂らせていく。ああ、かわいい。もっと見たい。素足を絡ませ先輩の滑らかな肌を堪能しつつ、ふと心に思い浮かんだままのことを口にしてみた。
「…先輩、今日は胸だけでイってみますか?」
「へ、胸だけで?っぁ、」
前々から少しだけ、いや、大分興味のあったことだった。俺の突然の提案に先輩は表情に戸惑いの色を浮かべるが、再び胸にやってきた甘い刺激にその色が溶かされていく。
「ン、っぁ、なまえさ、」
「調べたんですけど、胸だけでイくの、すごい気持ちいいみたいですよ」
「ひ、っんんぅ、ぁ、ま、って」
待って、そう言われたけれどやめはしない。先輩の気持ちいいところを触れながら言葉を続ければ、潤んだ瞳が俺を見つめた。それに微笑んで、顔中にキスを落としながら胸全体を撫であげる。涙で境界が曖昧になったその瞳からは、鼻先がくっつきそうな距離でも俺の輪郭はぼやけて見えているのだろうか。見えなかったらいいなと思う。きっと今の俺は、ニヤニヤと欲情して、ひどく嫌な笑みを浮かべているだろうから。胸だけで達する先輩が見たくて、その先を想像して、さっきから背中がぞくぞくしている。
「ねえ、アズール先輩」。情欲の色を隠さずに、けれどなるべく柔らかい声音で名前を呼ぶ。本人はいつも否定するけれど、アズール先輩が俺に名前を呼ばれるのが好きなことは知っている。普段あまり効果はないけれど、快感でずくずくに蕩けている先輩に対してはてきめんなことも。
「ぁ……でも、」
案の定、名前を呼ばれた先輩はきゅ、と眉を寄せ、快感と不安の合間の揺れた声が喘ぎの間に漏らされた。ああ、もっと素直になってほしい。理性と迷いを快楽でかき消すように、ぷくりと勃ち上がった乳首を指の腹でなぞる。確かな快感を与えるような触り方はせず、先端からそっと乳輪をなぞるように指を動かせば、その度にしなやかな肌は震えて、ん、っん、と結ばれた薄い唇から小さい声が喘ぎ漏れる。
「ぁ、っん、そんな、の、今まで一度も、っしたこと、ないですし……」
「大丈夫、先輩ならできますよ、だってエッチだし、」
「っん、ぅ、根拠になってな、っぁ」
「それに、先輩は気持ち良くなるの、すごく上手ですもんね。胸しか触ってないのに──、」
薄い腹の筋を撫でながら、下腹部へと手を持っていく。そうして下着の上から盛り上がったそこをひと撫でして指を滑り込ませた。行為が始まってから一度も触れられていなかったそこにようやく触れられたからか、先輩の緩く開いた口からはぁ、と熱い吐息が漏れる。
「先輩のすごく硬くなってるし、我慢汁だらだらにしてる」
「ぁ、あっ…!なまえさ、っ」
ぬちゅ、熱を持った先輩の先端に触れれば淫らな水音が耳に入る。そのまま裏筋を上から下へとつつ、となぞっていけば、ひぅ、なんて少し裏返った可愛らしい悲鳴。その手は俺に縋って、口には出さずとももっと触ってと、熱に浮かされた目が雄弁に語っている。ああ、ぞくぞくと背中に走る甘い疼きに陶酔しそうだ。微笑んで口元のほくろにキスを落とせば、どうしてちゃんとしてくれないのかと言うかのように顔がくしゃりと歪んだ。
「ぅ、〜〜ばかッ、意地が悪いですよ…!」
「はは、すみません」
中途半端な動きのせいでいよいよ泣きそうな顔になってきた先輩に謝罪の言葉と共に今度こそ唇にキスを贈る。そうすればもう離さないかのように先輩の腕が首へと回った。ああ、これがたまらない。してしまう度にいつも申し訳ないとは思っているけれど、拗ねた先輩が可愛くて、その後の甘えるような仕草も可愛くて、どうしてもちょっとしたいじわるをしてしまう。
「っん、本当に、悪いと思ってるんですか…?」
「思ってますよ、もちろん」
眉は寄せられ、涙の膜が張った瞳が俺を睨む。機嫌を直して欲しくて頬に手を当てれば、むっとした顔をしながらも手のひらに擦り寄られる。その仕草がかわいらしくて目を細めながら見つめていれば、熟した唇が薄らと開いて。
「……触られてるの、胸だけじゃ、ないです、」
「え?」
「……キスも、たくさんしてる、でしょう」
先輩からの不意打ちに、きゅう、と胸が鳴る音がした。目元を染め、俺から僅かに視線を逸らしてぽつりと漏らされた言葉。この、変なところで意地というか、負けず嫌いを見せてくるところは先輩なりの「いやじゃない」の合図だ。回くどい、わかりにくい先輩なりのデレが、俺にはとても愛おしい。
「ふふ、確かにそうでしたね」
先輩の大好きな触れるだけのキス。さっきからキスしてばっかりだとは思うけれど、たくさんしても飽きないくらい、俺も先輩もこの触れ合いが大好きだ。
「アズール先輩、どんな感じか、試してみたくないですか?」
俺がお願い事をして、先輩をとろとろに絆して、そして「まんざらでもない」反応をもらったら。素直になれない先輩のため、そこから先の最後のあと一押しをするのは俺の役目だ。俺の言葉に先輩は視線を彷徨わせ、やがて潤んだ瞳が俺をそっと窺い見る。そして。
「……キスもしてくれないと、いやです」
やっぱり素直じゃないなあ。でも、そういうところが大好きなのだけれど。
ようやく出たイエスの合図に頬をゆるゆるに緩ませながら、アズール先輩の意地っ張りな唇を塞いだ。