【25】流星群の夜
何、この状況?
トイレから戻ってきたら遊がおるやんけ。
勿忘草のせいか、遊の霊圧に気づけんかった。
とりあえず、自分の机で書類に目を通しとるけど、昨日発作起こしとった奴目の前におんねんけど大丈夫かと心配になるやん。
そんな本人は発作なんて忘れたかのように部屋の中をキョロキョロと落ち着かん様子や。
「キョロキョロしてどないしたん?落ち着かへんか?」
「あ、いえ…この音楽はどこから流れてるのかと思いまして…レコードの機械があるようには見えませんし…」
「あー、これやこれ。ミュージックプレーヤー言うんやで。」
「え?そんな小さな機械から流れてるんですか?」
「現世ではみんなこれで聴いてるんやで〜」
なーんて得意げに言ってみれば、へぇ〜なんて言うとって、遊は音楽に興味なんかあったやろか?
「この曲って…」
「これか、これはジャズなんやけど、元々はクラシックの曲で「ノクターン第2番…ですよね?」
「‼…そうやけど、遊ちゃん"知っとるん"?」
「はい。ジャズではありませんが、レコードは持ってます。」
「レコード…そうか、"持っててくれとるんやな"」
「え?」
「この曲、ええよな。」
「ぁ、はい。心落ち着きます…。」
昔、俺が遊にプレゼントしたレコード、ずっと持っといてくれたんやな。
お前は覚えてへんかもしれへんけど、あの日の夜のことは今でも忘れられへん。
彗星を見た後、星にハマった遊に流星群を見せてやろうと俺の部屋に呼んだ。
食事も済ませ、明かりを消し窓際に座って二人で空を見上げた。
後ろから抱えるように座って遊の頭に頬擦りした。髪から香る石鹸の香りがいい匂いやなって思うたのを覚えとる。
遊の腹に回した腕に遊の腕が重なった。
「真子さん、この流してくれてる曲何?」
「クラシックや。心落ち着くやろ?」
「真子さんがジャズじゃないの珍しいね。」
「たまにはこう言うのもええやろ。」
「うん…なんか落ち着く。」
そうやろってドヤついたら、真子さんが作ったわけじゃないのにって小さく笑うた。
ショパンって奴が作ったんやって言うたら、もの知りだねってそれも小さく笑うた。
それが愛しくてたまらんかった。
「真子さん、私、このレコード欲しいな。」
「お、遊がレコード欲しがるなんて、それこそ珍しいやん」
「さみしい時、これ聞いて真子さんのこと思い出すよ。」
「アホか。会えへん時あったって数日やろが。」
「だから、数日でもさみしいんだってば!」
本当にわかってないんだからって少し頬を膨らませて俺の腕を軽く何度か叩いとった。
ショパンのレコードの針が最後に達したのか音が止まった。
中々降ってこない流星群やったけど、飽きもせず空を眺めて綺麗だねって言う遊を見とったら、ホンマに好きになってよかったなと思うた。
もう一度ノクターンが聞きたいと言う遊の為に、レコードの針を最初の位置に戻した。
―君と夜想曲をもう一度。
prev next
back