【24】あなたの色が
…ここは、私の部屋?
「っ…」
「遊、目を覚ましたみたいだね。」
「トキ…私…」
「発作を起こしたんだ。」
「発作…」
「…まだ警報が怖いか?」
「…わからない。何で警報が怖いのかも…でも、警報が鳴った瞬間、絶望感でいっぱいだったの…」
「そうか…」
あの絶望感は何だったんだろう。
この世の終わりを告げるような音。
私の中でそういう音として警報は刻み込まれている。
"本当の私"は"今の私"では想像も出来ない辛い経験をしたんだろうな。
夢の中の"私"が忘れられない。
翌日、京楽隊長に謝りに行った。
「取り乱してしまい、申し訳ございませんでした。」
「ボクは大丈夫だよ。遊ちゃんはもう大丈夫かい?」
「はい。…正直、なぜ取り乱してしまったのかも、記憶がないせいなのかはっきりしないんですが…。」
「そうか…。ボクはああやって遊ちゃんがボクにすがり付いてくれるのはすごぉく嬉しいけどね。」
「隊長」
「怒らないでよ、七緒ちゃん。七緒ちゃんでも嬉しいよ。」
「そういう事ではありません!」
なんだか日常は普通にやってくる。
こうして隊長と七緒さんのやりとりも微笑ましいもので、でも、何か心がポッカリと開いた気持ちになるのは、あの人たちの記憶が無いからなのだろうか。
四人に謝りに行ったほうがいいかと聞けば、事情はボクとトキ君で話しておいたから大丈夫だよと言ってくださった。
「あ、そうしたら、これだけ五番隊に持って行ってくれるかい?」
「かしこまりました。」
隊長から書類を受け取り五番隊へと向かった。
ふと平子隊長の顔が思い浮かんで、胸のあたりが少しだけざわついた。
あの金の色や薄茶色の瞳が…待って、今何を想ったの私…。
「失礼いたします。」
「あ、遊さん!お疲れ様です!どうされたんですか?」
「京楽隊長から頼まれて、この書類を…!この音楽は…?」
「あぁ、平子隊長が現世からお持ちになったもので、いつも流してるんですよ。」
「そう、なんですね…」
「あ…この書類、隊長の印が必要ですね。こちらへどうぞ。」
そう言われて通されたのは五番隊の執務室。
中に入れば平子隊長はいなくて、少しだけほっとした。
今心の準備もなくお会いするのは緊張でどうしたらいいのか分からなくなりそうだからだ。
「あれ、いないですね。今お茶入れますから、座って待っててください!」
「ぁ、はい。いや、お構いなく…って聞こえてないよね。」
執務室に流れるこの音楽を私は知っている。
なぜなら私もこの音楽のレコードを持ってるから。でも、見渡す限り、この部屋にレコードを聞くような機械はない。
「あれ、"遊ちゃん"やんか。こんなとこでどないしたん?桃のやつおらんかった?」
「!ぁ…いえ、その…書類をお持ちしたのですが、印が必要だったようで…雛森副隊長はお茶を…」
「あー…そうか。まぁ、そんな緊張せんとくつろぎや。」
やっぱり、その金が、その薄茶色が…
全て恋しいと思うのは一目惚れと言うものなのだろうか?
―恋しくて、恋しくて。
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