【29】隠されてきた真実は
「お酌しに来ました〜!」
「おぉ、気が利くなぁ!」
とくとくとく、と隊長たちのお猪口にお酒を注いでいく。
遊ちゃんからお酌してもらったお酒は格別に美味しいよなんて京楽隊長はご機嫌だ。
そんなことないですよって最後に注いだのは平子隊長のお猪口だった。
おおきにって一気に飲んで、ほんまやなって私に笑いかけないで欲しかった。
気持ちを抑えられなくなってしまいそうだから。
「…遊ちゃん、何かあったんか?」
「!…えっと「隊長〜!」
「絃乃、酔ってんのか?」
「‼」
「酔ってないですよぉ。あら、遊さんじゃない!」
「なんや、知り合いか?」
「やだなぁ、隊長知らないんですか?私と遊さんは「絃乃さん!」
「何?別に隠すことじゃないじゃない。私たち
異母姉妹だって。」
「‼」
別に皆に隠していたわけではない。けど、先日の絃乃さんの発言に怯えている自分もいる。
だから、彼女の一つ一つの言動が気になって仕方がない。
「遊さんは私と同じ時園の名を語るのは嫌だって言ってずっと風雅を名乗ってるんです…」
「違っ」
「仲良くしたってや?鬼道衆から移動してきたばかりやから、わからんことも多いやろうし。」
「…はい。」
「遊さんもどうぞ!」
「…」
「私が注いだのは飲めないって言うの…?」
「いえ…いただきます。」
「あれ、ちょうどなくなっちゃった。隊長、新しいの持ってきますね!」
彼女から受け取るのは少しだけ気が引けたが、他の人も見ている手前断る訳にもいかなかった。
そりゃあ、直属の部下だし、あんな風に言っていればあちらを信じてしまうのも無理もない。
まるで私が彼女を嫌っているかのような言い方…。
平子隊長と絃乃さんが話で盛り上がっている間に、私は静かに席に戻った。
「あいつ…」
「トキ、睨まないで。」
「遊、なんで飲んだ?」
「ごめん、お水もらって来て欲しい…」
「すぐ戻る、待ってて。」
心なしか動悸がして、少しだけ倦怠感を感じる。
せっかくのお祝いの席なのに…
「遊さん…?具合悪いですか?」
「イヅル君…うん、ちょっと酔ったみたい…」
「大丈夫ですか?酔うほど飲むなんて珍しいですね。お水飲みますか?」
「今、トキが取りに行ってくれてるんだけど…」
「先に席に戻っちゃうなんて、って遊!顔真っ青じゃない‼」
「ごめん、乱ちゃん…やっぱり今日はもう帰ろうかな…」
その方がいいと宴会場の入り口ま付き添ってくれて、ちょうどトキが水を手に戻ってきくれたところだった。
「具合悪いみたいだから、トキ後は頼んでいい?幹事だから抜けれないのよ…」
「大丈夫です。ありがとうございます。」
「待てや。」
「平子隊長!」
平子隊長が私を支えてくれているトキの腕を掴んでいた。
トキはなんですかと隊長を睨んでいる。
もはやそれを注意するほどの気力もないくらい気分が悪かった。
「なんでお前が一緒に行くねん。」
「なんでって…私と遊は同じ部屋で過ごしているからですが、何か問題でもありますか?」
「っ⁉同じ部屋って「隊長!急にいなくならないでくださいよぉ!」
「じゃ、私たちはお先に失礼します。」
二人の会話を遮って入ってきた絃乃さんの声がより頭に響いてもう何も考えたくなかった。
―私だけが知っていればいい。
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