【30】兄妹たちの
朦朧とする意識の中で、色んなことを考えた。
私ってなんなんだろう。
静かに、平凡に生きてはいけないのだろうか。
普通の家族が欲しかった。
普通に恋愛がしたかった。
普通に生きていくことはなんでこんなに難しいんだろう。
あの宴会から数日経っても、私の体調は良くならなかった。
最初は無理をしながらも仕事をこなしていたものの、任務中に意識を失ったことでしばらく休むようにと隊長から言われてしまった。
自室の布団で目が覚めた。
全ての襖が閉ざされた部屋は薄暗くて、今は朝なのか昼なのか、はたまた夕方なのか分からない。
トキの気配がないことを考えると勤務時間内なのだろう。
私は何をしているんだろうとため息をひとつついた。
「まだ生きていたのね。」
「!」
「もっと毒を盛ればよかったわ。」
「やっぱり、そうだったんですね…絃乃さん」
「分かってたみたいな口ぶりね。」
「111年前と同じ事をするつもりですか?」
「…なんの事を言ってるのかわからないわ。」
しらを切るつもりらしい。
ああ、体が上手く動かない。トキもいない。
この状況をどうしたらいいものか。
「あなた、平子隊長の事好きなんでしょ?」
「今関係あります?」
「否定しないってことはそうなのね。」
「…」
「邪魔してやろうと思ったのに、平子隊長全然なびかないし。」
そりゃあそうだ。平子隊長は昔の恋人を今でも想っているのだから…。
私から奪うも何も、その恋人に既に負けてるのだから奪うものは何も無い。
そう告げたら絃乃さんはそれ本気で言ってるの?と何故か呆れ顔になった。
「記憶がないって聞いてはいたけど、ここまで来ると同情すらするわ。」
「…?」
「…まぁいいわ。時鳥を返してもらうわよ。」
「!!」
絃乃さんの手が時鳥に伸びていくのが見えているのに体が言うことを聞かない。
重い体を起こし、動悸と呼吸が乱れる中、時鳥を持ち去ろうとする絃乃さんの足を掴むので精一杯だった。
「しつこいわね。」
「あなたは…時鳥を持てない…」
「っ!ふざけないで!!あなたがいなければ私が時鳥の継承者だったのよ!」
「違う…」
「っ許さない…、最初からこうすればよかった」
時鳥が鞘から抜かれる音がした。
私に刃を向けて言い残すことは無いかと聞かれた瞬間、あ、私死ぬんだってなんだかやけに冷静な自分がいた。
トキ、ごめんね。
さようならと絃乃さんの声と斬魄刀が振り落とされていく瞬間がゆっくり感じて、私も自分の人生にさようならをしよう。
目を瞑って覚悟を決めた時だった。
少しだけ頬に風が当たり、懐かしい香りと共に金属がぶつかる音がした。
「何をしている、絃乃。」
「‼お兄様…⁉」
「時鳥を下ろせ。」
―望まれぬ再会。
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