【37】この思いは一体



「ふぁあ〜あ…」
「隊長、欠伸してないで手を進めてください。」
「厳しいな、桃…」


あれから二週間くらい経ったやろうか。
あの後すぐに春水さんが部屋に来て…



「遊ちゃん、大丈夫かい?」
「京楽隊長!はい、体調は良くなったみたいです。」
「遊ちゃんのお兄さんが来て何があったのか教えてくれたんだ。…ちゃんと再会出来たみたいで良かったね。」
「…はい」


何や俺に言うとるみたいで少しバツが悪かった。


「トキくんは?」
「あ、トキは「あいつ、急に遊を斬魄刀で刺したんや。今度会ったら一発ぶん殴ったる。」
「トキくんが、かい?」
「瀕死の状態だった私を助けるためにした行動なんです。…力を使いすぎて姿を消してしまいましたが、少し休めばまた姿を見せてくると思うので…」


そう言ってあいつを庇うような遊に少し苛立った。
助けるとはいえ、いきなり刀を刺す奴おるか?
それにあいつは何だか俺以上に遊と親密な気がする。二人を見とると、…俺はこの100年を痛いほど実感してしまうんや。

折角の再会だけどと春水さんに今日のところはこの辺にしてまた改めて場を設けようという事で、俺は後ろ髪ひかれる思いで帰ることにしたわけなんやけど…
あれからその場というものはやって来なくて、隊主会で遊の復帰の知らせを聞くことになってしまった。

一連の事件は時園家の"ただの"内輪揉めだったと軽く報告された。
それにもイラついたのは言うまでもない。最愛の人の命がかかっていた話がただの内輪揉めだったやと?
それでも俺が怒らずに居れたんは春水さんが遊の希望でそういう事になったんやって聞いたからやった。

二週間くらい経とうとしているのに、俺はまだ遊に会うことが出来ずにいる。
桃に怒られて手を進めていれば、ほのかに遊の霊圧を感じた。
あの事件があった後、窓際に飾っておいたはずの白い勿忘草は忽然と消えた。
その窓から外を覗き込めば、俺は喉の奥が熱く感じて、頭から血が吹き出そうな気持ちになった。


「持ちすぎだ、遊。」
「大丈夫だってば!トキ心配しすぎだよ!私にも持たせて?」
「…じゃ、少しだけ。」
「ありがとう。」


ずっと会いたいと思っとった遊が居って、あんなにぶん殴りたいと思っとったやつが普通に、何もなかったかのように遊の隣に居る。
急に立ち上がって無言で部屋を出て行こうとする俺を呼ぶ桃の声も聞こえへんくて、気づけば俺はすでにあいつの胸ぐらを掴んどった。


「…」
「真子さんやめて!!」
「何普通におんねん!お前があの時遊にしたこと許さへんからな‼」
「何をそんなに怒っているんですか。遊はご覧の通り無事じゃないですか。」
「そういう問題ちゃうねん‼」
「じゃ、何ですか。あ、私が遊と一緒にいることに嫉妬してるんですか?同じ部屋で過ごしてるって言った時もなんか怒ってましたもんね。」
「トキもやめなさい‼」
「遊はこいつと付き合っとるんか‼?」
「はぁ⁉何でそうなるんですか⁉そんなわけないじゃないですか‼」
「じゃ、何やねん‼」
「トキは…」


怖い。今更、遊の口からこいつとの関係を明らかにされることが、怖い。
でも、もう後に引けない俺はだからなんだと最愛の人に怒鳴ることしか出来へんくて…
まさか遊から衝撃の事実を知らされるとは思ってへんかった。


「トキは私の斬魄刀なんです‼」
「斬魄、刀…?」
「この子は時鳥ほととぎすなんです…」
「は…?」
「それにトキは「嫉妬してくれているところ申し訳ないが、私は"女"だ。」
「…はぁっ⁉」


―どこにぶつければいい。


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