【38】かみさまってやつも



泣くな、我が姫よ。

君と出会った時から君を守ると決めて、君のそばでずっと見守ってきた。
見ていてはらはらするような小さな君はもうどこにもいなくて、大人になった君は強く、聡明でいて優艶。
私は具現化する必要もなくなり、ただひたすら君のそばで君の使う刀として見守っていた。

君は大人になった。
元々持つ才能で君は地位を築き上げていき、良き仲間に出会い、そして恋をして愛を知った。先代の主人の様に愛する人を見つけ幸せになる、はずだった。


仲間も愛した男も失った君はボロボロになった。
泣き続ける君の精神世界はいつも雨が降っていて、いつの間にか君はここに閉じこもり始めたね。
泣き続ける君を、びしょ濡れの君を、助けたい。もう泣かないで欲しい。


「遊…もう泣くな」
「…トキっ…」
「これからはそばに居るから、もう泣くな。一緒に生きよう。」


"かみさま"なんて奴がいるなら
頼む…

この子を、遊をそばで守っていきたい。その為の力を、機会を、私に与えてはくれぬだろうか。


「トキ…!その姿、どうして…?」
「遊…私は…どうなっているんだ…?」


自分の意思に反して現実世界に姿を現したのは初めてで、目の前には頬を涙で濡らして私の出現に驚く遊がいた。
私が死覇装を身に纏っているということは、具現化ではなく実体があり死神になれたと言うことだ。

"かみさま"って奴が本当に私の願いを叶えてくれたのだろか。

これで私は君を守ることができる。
君に忍び寄るものから君を…


「遊に触れるな。」
「!…君は誰だい?」
「誰でも良いだろう。遊に触れたらその手を斬る。」


この男に悪意は感じない。だが、もう誰も遊を傷つけて欲しくなかった。
私は最大限の殺気で男を威嚇するが彼は両手をあげ、顔の辺りでひらひらと振って何もしないよと笑っていた。

遊は私について、この斬魄刀に起きた話をした。
彼は一瞬驚きはしたもののすぐに表情を戻し、それでも遊ちゃんを…と言った。


「遊はどうしたい?」
「私は…春水隊長について行こうと思う。」
「遊ちゃん…」
「ならば、私も行く。私は遊のそばに居る。でなければ、遊をお前の所には行かせない。」


私はこの京楽春水という男を真っ直ぐに見つめ、一瞬も目を逸さなかった。彼も然り。
そして、ふっと柔らかな笑みを浮かべると君もボクのところにおいでと言うのだ。


「遊ちゃんを守りたいんだろう?ボクもそうだ。せっかく"神様"が君に死神の力をくださったなら利用すべきだろう。」
「…というと?」


私も初めての体験で、この状況でどう遊を守っていけるのか実際考えられていないのも事実だった。


「どこにも所属していない死神が遊ちゃんのそばにずっといたら怪しまれるだろう?君もボクの、八番隊の一員になるんだ。そこで遊ちゃんの部下として遊ちゃんのそばにいるんだ。ボクが必ず君達を守るから。」


わかったとだけ頷いた。
それじゃあ行こうかと言う隊長の背中について行くようになり、約束を守ってくれる彼に絶大なる信頼を抱くのはもう少し先の話。

―君を守りたいと思ったのだと思う。

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