【11】あとから聞いた話



千鉄さんが任務中に倒れたって言う知らせが入った。ここ最近少し体調悪そうにしてた気がする。
大丈夫だって仕事する千鉄さんにボクも甘え過ぎていた。隊長失格だね。
千鉄さんのいる部屋の扉をノックすると、どうぞって返事が来た。もう起きてるの?


「千鉄さん、入るよ?」
「楼十郎か。悪いのぉ、大事な時に…」
「いや、ボクも無理させたね。体調はどうだい?」
「もう年かのぉ、卯ノ花さんにももう引退するように言われてしもうたよ。」
「そうか…」


困ったねぇ、あたしの後釜を決めとかにゃいけんよと笑う千鉄さんは泣いてるように見えた。


「もう千鉄さんの中で決まってるんじゃないの?」
「よう分かっとるじゃないか」
「たぶん、ボクも同じ事考えてると思うよ。」


すみません…と、四番隊の隊員がお身体に触りますのでと控えめに声をかけてきたので、ひとまず今日は帰ることにした。
はぁ、遊にはなんて言ったらいいんだ。千鉄さんの事を尊敬していたし、自分の母親の様に慕ってもいた。そんな人が病気で引退を強いられてしまった。もう一緒に働くことは出来ない。彼女はどう思うだろうか…


「湿気た顔しとんなァ、ローズ。」
「…真子。」
「聞いたで、千鉄サンの件。」
「あぁ…その件でちょっとね。」
「ちょい付き合えや。」


んー…って考えながら歩いていたら、五番隊隊長の平子真子に声をかけられた。隊長に就任してから色々と気にかけてくれる良い奴だ。
行きつけの飲み屋に着いて、酒を酌み交わす。


「で、何にそんな困ってんねん。」
「遊にどうやって千鉄さんの事を伝えたらいいか…」
「誰やねん、そいつ。」
「あぁ、うちの三席だよ。会った事なかったかい?」
「ないなァ。」


真子に遊がどれだけ千鉄さんを尊敬し、懐いていたかを話した。聞いてるのか聞いてないのか、へぇーだのほぉーだの相槌を打つばかりだ。


「君、ボクの話聞いてるの?」
「失礼なやっちゃなァ、聞いとるわ。」
「相槌しか打ってないじゃないか。」
「ローズはその三席を信頼しとるんか?」
「当たり前じゃないか!ボクの背中を任せてもいいくらいだよ!」
「なら、どう伝えても大丈夫やろ。きっとそいつは千鉄サンの思い背負って前向いて行くと思うで。それよりも、はよ一番に報告してやらな、心配しとるはずやで?そない千鉄サンの事が好きなら尚更な。」
「!」


―あなたに救われた女の子がいました。

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