【15】今何してるのかな



何がと言われると、わからん。気づけば見入っとった。一目惚れってアホかなんてローズに言うたけど、アレは完全に一目惚れやった。
油断しとったって言うのもある。言い訳やけど。


「こんにちは〜。ローズ君いますかー?」
「隊長、普通に入れませんか。」


ええやろ別に、いつもそおやんかって惣右介にツッコミながら三番隊隊舎に入れば、いつもなら千鉄サンが出迎えてくれるはずやったけど、引退した。気づけば目の前に女の子がおって、笑顔で出迎えられた。


「隊首室おります。ご案内致しますので、こちらへどうぞ。」
「風雅さん、ありがとう。」


その顔が少し寂しげでキレイで俺は一言も発する事も出来ず、惣右介が代わりに礼を言ってくれとった。さすがやな。
部屋につけばローズが座りなよって座布団を出しくれて、何気ない会話をしているうちにまたあの子の声が聞こえた。横から失礼しますって声と湯呑が出てくる。


「おおきになァ。」
「いえ、では、失礼しました。」


ほんの一瞬やった。さっきはあっと間で見えへんかったけど、瞳も黒かった。その時の彼女の笑顔もやっぱり寂しげで…。
気づけば目で追っとった。
そんな俺に気づいたローズが気に入ったのかと聞いてきよった。


「今時一目惚れってアホか。」
「なんだ、違うの?」
「気が利くなァ思うただけや。」
「そうでしょ。彼女がボクが話してたうちの三席。真子の言ったことは正しかったよ。」
「あぁ、千鉄サンのファンの子か。」
「ファンって…」


あの子が三席やって聞いて納得した。千鉄サンおらんくなってホンマに寂しいんやな。
聞けば副隊長にするらしい。まぁ、背中任せられる言うてたもんな。
羨ましいぞ、ローズ。俺を見てみぃ、眼鏡かけた何考えとるんかわからん男が副官やぞ。


「なにか?」
「なんもないわ。行くで惣右介。」
「はい。」


気づけば彼女の任官式で、可哀想にあんなキレイな顔が緊張で一色や。隊長が勢揃いやし無理もないか。特にすぐ側にはあの爺さんや、緊張せぇへんっちゅうほうが難しいで。


「それでは風雅副隊長、一言。」
「はい。この度、三番隊副隊長に任命していただきました、風雅遊です。至らぬ点もあるかとは思いますが、命ある限りこの任を全うする覚悟です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」


しっかしまぁ、真面目やなぁ。そない力入れんでもええのに。会議が終わって横目で見ると一息つく彼女が見えた。おめでとさんって声かければ、ありがとうございますってホンマに真面目すぎるで。


「硬い硬い、もっと肩の力抜きぃ?ずっとそんなんじゃ気持ちもたへんで、遊チャン。」
「そうだよ、少し力を抜きなよ。」
「は、はい。」
「ええ子やな、遊チャンは。」
「もう口説いてんの?」


ローズ、一言多いで。惣右介も便乗しよってからに。遊チャンの前でやめぇや!恥ずかしいやんけ。アホかと目合わせん様にするんで精一杯やで、こっちは。


―君の夢を見たよ。

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