【18】用意はいいですか



トントンとトキが背中を叩いてくれている。そのリズムが心地よくて、だいぶ呼吸も整ってきた。
執務室に通してもらうとすぐに副隊長にも招集がかかり、副官章を着けて心配そうな表情で出ていった。そんなに事が大きくなっているの?


「遊、何かが起きようとしてる。」
「なにか…?」
「昨日、市丸が旅禍と接触したらしい。」
「え…ギンちゃんが…」
「隊長が呼ばれたのもその件だろう。」


ガンガンガンガンガンガンガンガン
―緊急警報!!緊急警報!!瀞霊廷内に侵入者有り!!
各隊守護配置について下さい!!―


「っ!」
「遊大丈夫か?」
「一日で、二回も聞くハメにっ、なるなんて…っ」
「遊、息を吐いて」
「わ、かってるっ、はぁっはぁはぁ」
「配置につけそう?」
「大丈夫っ、慣れてきた。」


なり続く警報にだいぶ慣れてきた。
さて、私も配置につこう。行くよとトキに言えば、静かに頷いた。
久々に斬魄刀を使わないことを願う。


「風雅五席!こちらです!」
「ご苦労様です。遅くなってすみません。」
「体調の方は大丈夫ですか?」
「ご心配をおかけしました。旅禍は?」
「こちらにはまだ。」
「そうですか…。向こうの戦闘力は未知数です。気をつけて下さい。」
「はい!」


八番隊の隊士達と合流し、状況の把握をする。聞けば私が駆けつけるまでの間に彼らは遮魂膜を突き破り、4つに分かれて行動しているらしい。

結局、私達の持ち場には旅禍が現れる事はなかった。一日が終わり、京楽隊長からの報告を聞けば十一番隊のあの一角くんと弓親くん、そして、六番隊副隊長の阿散井くんもやられたそうだ。旅禍はそんなに強いのか。


「という事で、遊ちゃん」
「あ、はい。」
「副隊長を含んだ上位席官の瀞霊廷内での常時帯刀と戦時全面解放の許可が下りたから、よろしくね?」
「常時帯刀、ですか。」


久しぶりに常時帯刀命令が出た。隊長は報告を終えると、それじゃおやすみと笠を深くした。お疲れ様でしたと呟けば、はーいと気が抜けるような声が聞こえてきた。隊長のおかげで肩の力が抜けた。さっきまで緊張やら緊迫感やらで全身に力が入っていたらしい。手が震え、足元がふらついて一瞬倒れそうになった。


「遊、大丈夫かい?」
「ありがとう、トキ。ちょっと気を張りすぎてたのかも…私もまだまだだね。」
「明日に備えて休もう。」


―はじまりの合図は空から突然やってきた。

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