【19】あなたのおかげで



朝起きて、死覇装を見にまとう。襟を正して、斬魄刀を腰にさす。鏡の自分を見つめて気を引き締めた。


「よしっ。」
「遊、今日はどうするんだ?」
「とりあえず、隊長のそばで副隊長と待機するよ。」


昨日、帯刀命令を受けた時…

「遊ちゃん、明日予定あるー?」
「え…?明日は担当の守護配置につくつもりですが、何がございますか?」
「それじゃ、明日は遊ちゃんの配置変更!ボクと七緒ちゃんと同じ所でよろしくね!」

有無を言う隙もなく、もとより言うつもりもなかったけど、隊長の言うことを聞くことにした。
隊長の霊圧を探して部屋に入ると、外を見張る副隊長といつも着ている羽織を広げて寝転がる隊長がいた。


「おはようございます。」
「おはようございます、遊さん。」
「おはよう!あれ、トキ君は待機しているのかな?」
「はい、待機させました。」


それからは隊長とたわいない会話をしていた。乱ちゃんと飲んだ話をすると次はボクも誘ってよと駄々をこねられた。


「旅禍です。」
「え〜〜。な〜〜〜んだ、もう来ちゃったのかぁ…」
「隊長、そう仰らずに」
「仕方ない。そんじゃ、行くとしますかね。」
「本当に…向かわれるのですか?たかが旅禍一匹、私や遊さんでも」


たしかにそうだ。しかし、隊長は副隊長の言葉を遮り、総隊長の命令だから仕方ないとか大人はメンツを潰されるのが嫌いなのだとか、いつもに増して真面目な事を言うのかと思ったのも束の間…


「それに、ボクの七緒ちゃんと遊ちゃんが戦いに出て、疵ものにでもなったら大変だしね♡」
「誰がボクの七緒ちゃんですか。それに私はいいとして、遊さんを巻き込まないで下さい。」
「え、七緒ちゃんは構ってくれるの〜?嬉しいなぁ〜、いつもそんな事ないのに♡まぁ、つれない七緒ちゃんもそれはそれでステキ…♡」
「わかったわかりました!もういいからさっさと行ってください!」


私はふざける隊長にイラついている副隊長を宥めていると、へいへーいとやる気のないような声が聞こえてくる。
七緒さんはなんだかんだきっと心配なんだ。それを冗談で返すから怒られるんですよ、隊長…。いくら隊長とは言え、今回は普段とは違う。相手は正体のわからない旅禍なのだ。心配になるのも当然なわけで…


「まあ、そんな心配しなさんな。…すぐ終わるよ。」
「隊長…。」
「ほんの戯れさ。」


いつもこの人はこうして遊びながらもしっかりと安心感を与えてくれる。あの時、残される恐怖でいっぱいだった私に手を差し伸べてくれたあの時からそうだった。


―背中を見送れるようになってきたんですよ。

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