【21】いつの間にか



「隊長っ…!」
「大丈夫だよ、遊ちゃん。ボクはちゃんと帰ってくるから。」
「はい…っ、でも、その…っ」
「だぁいじょうぶだよ。泣き顔も可愛いけど、そんなに泣かないで?すぐ帰ってくるからさ。」


昔、彼女がそうやって任務に向かうボクを引き止めては泣いていた。
100年前、ボクも彼女も大切な人を亡くした。そのメンバーの中に彼女の恋人も入っていた。すぐ戻るからと言って去った彼や上司の背中を彼女は今でも忘れられずにいる。残される恐怖に怯えながら、彼女はボクの背中を見ては心配そうに、置いて行かないでとでも言いたげな表情で涙を流した。
ボクは彼の代わりは出来ないけど、涙を拭いてあげることは出来る。それくらいしかしてあげられないんだけどさ。


「ボクのところに来ないかい?ボクも大切な部下が任務に行ったっきりになっちゃってね。」
「春水隊長…っ」
「なんだろうねぇ、君がどこか遠くに行ってしまいそうで。彼らの後を追って行ってしまいそうでね。」
「…っ…うぅ…っ」
「そんな事になったら、ボクはリサちゃんに怒られちゃうよ。なにやってんだって怒るんじゃないかな〜。」


ボクがそう言うと、遊ちゃんは声を上げて泣いた。もうだいぶ経つのに三番隊に残されたこの子はあの時に残されたままだ。このままでは三番隊も大変な事になる。痛みを分かってあげられる誰かがそばにいてあげないといけない。そう思ってボクは彼女を八番隊へ迎え入れようと思った。


「…春水さん、私はもう大丈夫ですよ。もう怖くはないです。」
「…そうかい。」


そんな彼女が今ではこう言っている。遊ちゃんはいつの間か前に進んでいたんだね。久しぶりに名前で呼ばれるとなんだかくすぐったかった。


「人間が瀞霊廷に入るってだけでも凄い事なのに…」
「全く大したもんだよね。恐れ入るよ。」
「いや、関心してる場合では…」
「…それにしても、最後の一撃がここまでとはね…」
「これをまともに受けてたら大変でしたよ…」
「そうかもしれないねぇ…」


遊ちゃんはそんな呑気な…って呆れた顔をした。不謹慎かもしれないけど、こんな風に遊ちゃんと話せるようになったり笑顔を見る回数が増えたりして、100年前の出来事は失うばかりだけじゃなかったって思うんだ。


―時はこんなにも進んでいたんだね。

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