【25】逃げる事を
隊舎に戻って隊長に藍染さんの報告を聞いた後、今日はもう休んでいいよという言葉に甘えて自室へと戻った。
ご飯も食べてお風呂にも入って、早めに布団に入ったのに眠れない…。
「…眠れない。久々に対話しようかな。」
結局、布団から出て斬魄刀を手にする。目を瞑り、精神世界へと足を踏み入れる。
私の世界には何も無くて、ただ広い草原の中に少し小高い丘があって、その丘の上には一本の木がぽつんと立っている。
「こちらで会うのは久しぶりだね。」
「そうね…中々会いに来なくてごめんね、時鳥。」
私の斬魄刀の名は「時鳥-ほととぎす-」
「そんな木の上にいないで、こっちに来てよ。」
「いいじゃないか、私もこの姿でいるのは久しぶりなんだ。遊の世界は無駄なものがなくて過ごしやすいし。」
「何も無いからね…。落ち着く?」
「あぁ、そうだね。」
時鳥は好きなだけ飛び回ると、私の肩に乗った。優しく頭を撫でてやれば気持ち良さそうに目を細めていた。
「いつもありがとう。」
「いいんだ。私が好きで遊のそばにいるのだから。それより、大丈夫か?」
「大丈夫よ。色々あり過ぎて動揺はしたけど、トキが居てくれたし。」
「そうか。」
私もこの世界にいると落ち着く。何も無くて、何も考えずにすむし、何も思い出さずにすむ。時鳥がいつも気を使っているのか、そばにいて話をしてくれる。
「別に気は使っていない。」
「また心の中を読む。」
「仕方ないって言ったじゃないか。それに、ここに来ないと遊は閉じこもってしまうだろ?」
「人を引きこもりみたいに…」
「実際そうじゃないか。」
「今は違うもん」
100年前、本当に辛かった時に私は精神世界に逃げた。現実世界にいたくなかった。部屋にも隊舎にも、瀞霊廷内には彼らとの思い出が多すぎて、どこにいても辛かった。
そんな私を心配して、時鳥が来てくれた。
「いつまでそうしているつもりなのだ。」
「もうあっちにいたくない…。」
「だからと言ってこちらにばかりいてはダメだ。」
「でも…、だって…!」
「毎日来てもいい。でも、ずっとここにいるのはダメだ。遊には…生きていてもらいたい。」
初めて見る時鳥の涙に、私は申し訳なく思った。
自分の事ばかりで周りのことなど考えられていなかったんだ。あの頃、そんな自分が嫌でどうしようもなかった時、時鳥や春水さんはそれでもいいんだって、前を向いて歩こうってそばにいてくれた。
今はみんなと共に歩いていきたい。
―誰も許してはくれなかったんだ。
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