【28】失うものなど



後悔?
してます。ずっと、ずっと昔から。
嫌でもついて行かなかったこと。
それから、ひとりだけ生き残ったこと。


「死ぬことは名誉なことではないよ、遊?」
「言われなくても分かってる。彼らがそれを望まないことも。…でも、前を向くしかない。進むしかないから。」
「遊…」
「明日は忙しい一日になるかもしれないから、ゆっくり休んでね。」


きっと隊長は何かを考えているに違いない。隊長が動く時に遅れをとらないようにしなきゃ。
隊長もこの処刑に違和感を抱いているようだったし、このまま一人の死神を死なせるわけがない。私に手を差し伸べてくれた、あの時のように。
しかも、今回は隊長の旧友でもある浮竹隊長の部下なら尚更だ。


そして、処刑執行当日。思ったより睡眠をとる事が出来た私は、早めに準備をして隊長たちの元へ向かった。


「どうせ私が何を言っても、ご自分のお好きにしかなさらないくせに…」
「……」
「…ご心配なく。私はせいぜい面倒に巻き込まれないように、数歩退ってついて行かせて頂きますから。」


隊長の霊圧を探りながら着いた場所に隊長と副隊長がいて、隊長がどうしたらいいかと相談をしていた。どうするかなんてもう決めていらっしゃるでしょうに。
だけど、いつもなら無茶をしようとする隊長を止める七緒さんも隊長のする事に従おうと決めたみたいだ。
それならば、私もついて行かなければいけない。
七緒さんの一言に少しだけ体を起こして参ったと言う隊長に歩み寄った。


「それじゃ、またボクだけ…山じいに叱られちゃうじゃないか。」
「その総隊長のお説教、私もお供いたします。」
「遊ちゃん」
「後悔のない道を歩みましょう。」
「そうだねぇ。」


後悔のない道を、自分に嘘をつかない道を歩みたいと思った。飾らない、本心の思うままに。
今はもう何も失うものなんてないのだから。


「ならば、私もお供します。」
「トキ…」
「ここ数日、なんだか思い悩んでいるようだけど。まさか、私を仲間外れにしようだなんて思ってないよね。」
「トキ君もいてくれるんじゃあ、心強い!」
「時間が迫ってます。そろそろご準備を。」


―何も無いなら、億さず正しく思うままにいこう。

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