【29】予想不可能な事は



双極の丘に到着すると十三隊いるはずが、一番隊を含め二番隊・四番隊・八番隊しか集まっていなかった。
隊長について行ったはいいものの、まさか副官以外の者がその場に立ち会うなんて事はありえないわけで、近くの物陰で霊圧を潜めて待機することにした。
もうすぐ始まるというのに集まりが悪いのには、各地で感じる霊圧の衝突が物語っていた。


「双極を解放せよ」


総隊長の一言でそれは始まった。
見なくても感じて分かるほどの双極の力。だけど、それに引けを取らないほどの力がこちらに向かっているのも感じ取れる。
心配することなどない気がした。
そう思った通りに旅禍の彼と双極がぶつかる気配が背中にビシビシと伝わる。
隊長、目の前で見ておられるのでしょう。私達はまた間に合わなかった。でも、一人の命が助かる。それだけで十分だ。


「来たみたいだね。」
「うん。でも、時が来るまでは出ていかない。トキ分かってるね?」
「了解。」


四楓院家が代々管理してきた天賜兵装を使って双極を止めたのは浮竹隊長だった。京楽隊長とは学友だと聞いている。詳しく聞いたことはなかったけど、あの息の合い方からするとただ仲の良かった友達ではなさそうだ。
お二人が天賜兵装に斬魄刀を刺すとすごい勢いで双極は破壊された。それを好機と言わんばかりに旅禍の少年は双極の磔架をいとも簡単に破壊してしまった。


「遊、これは加戦しなくていいのか?」
「まだよ。隊長からの指示が出ていないでしょ。」
「そうけど…」
「まだ私達が加戦する所じゃない。」


少年が磔架を破壊した事でここにいる誰もが唖然としている。少年は至って普通にしているし、本気で朽木さんを助けられると思ってるようだ。その気持ちが意志が羨ましいくらいに思う。
それは本当に一瞬の出来事で、旅禍の彼がやっと登場した阿散井くんに朽木さんを放り投げると、砕蜂隊長の命令により副隊長全員が動き出したようだったが、彼に容易くやられてしまった。

少年と朽木隊長の二人の交わった刃の行方も気になるけど、静かに揺れる総隊長の霊圧も気になった。


「よォし仕方ない!!それじゃ、いっちょ逃げるとしようか浮竹ェ!!!」


京楽隊長のその一言は冷静に下した判断と私への信頼だと思った。


「さぁ、トキ準備して。そろそろ出番よ。」
「遊!!あれ!!」


光の速さで消え去った御三方を見送っているとトキの慌てた声に振り返った。そこには砕蜂隊長が浮竹隊長の部下に手をかける寸前で、私は一瞬息をするのも忘れてしまっていた。
それは浮竹隊長の部下を助ける余裕がなかったわけでも焦ったわけでもなく、ただ懐かしい霊圧の登場に夢でも見ているのかと思ったんだよ…


「何者だ貴様!!」
「…やれやれ…そう騒ぐな。相変わらず気の短い奴じゃ」
「夜一さん…」


―いつだって突然で、さも当たり前かのように起こるんだ。


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