【2】紹介します



「遊ー!」


そうやって私の名を大声で呼ぶのは紛れもなく今はこの人しかいない。


「乱ちゃん。」
「今夜みんなで飲もうって話なのよ!あんたも来なさい!」
「え、拒否権は「あるわけないでしょ♪」ですよね…。」
「トキも来るわよね?」
「連れていきます。まぁ、言わなくてもついて来るとは思いますけど。」


よろしく〜♪なんて、綺麗なウェーブがかった髪を揺らしながら去っていく彼女は、十番隊の副隊長・松本乱菊。

むかしむかし、八番隊での飲み会の帰り道。ふと寂しくなって、珍しくひとりで深い闇のような夜空を見上げていた。ふぅ、とため息をついた同時にドカっと勢いよく背中に衝撃を感じた。


「なぁに辛気臭い顔してんのよォー!笑いなさい!」
「は、はぁ…誰ですか?って、お酒臭ッ!」
「じゅー番隊のまっつもと、乱菊です!」


いきなり知らない酔っ払い隊士に絡まれ、どうしたものか…。こんな時に限ってトキがいない。飲み会は行くと女隊士に囲まれるから嫌なんだとか。まぁ、あの容姿では女の子達が黙らないだろう。


「あんたも誰かを待ってんの?」
「え?」
「顔に書いてあるわよ。」
「待ってる…のでしょうか。」


待っても意味が無い。
彼は、彼らはもういないのだから。
いないのに、いつかまた会えるのではないかと思っている自分もいる。
いや、会えるかどうかの可能性を信じてるんじゃなくて…


「会いたいだけよね…」
「!」
「私も会いたかっただけなのにさァ!」


そう言うと彼女はぎゅっと私を抱きしめた。耳元で私の知っている男の名を呟くと、すーっと寝息をたて始めてしまった。
なんて罪深い男なの。ダメじゃない、こんな美人にこんな顔させて。
ねぇ、そうでしょ?ギンちゃん。


あっという間に仲良くなった私たちは、一緒にお昼を食べたり飲みに行ったり、気づくと親友のようになっていた。
後で乱ちゃんがギンちゃんと幼馴染だって聞いた。
私も彼らの話をした。大好きだった彼の話もした。
乱ちゃんは忘れなくていい、忘れなければ彼らの生きた証は私の心の中に残るんだからって教えてくれた。


―私の大好きな人です。

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