【3】見えていますか



「よォ!お前らおせーぞ!」
「すみません、隊長に捕まってしまって。」


みんなとの飲み会に間に合わせるために回ってくる書類をテキパキと片付けて、トキと共に隊舎を出ようとしたところで京楽隊長に会った。
お疲れ様ですと頭を下げ、帰ろうとする私たちを引き止めてきた。

「飲み会に行くのかい?ボクもお供していいかなぁ♪」
「それは、伊勢副隊がお困りになるのでおやめになった方が良いかと思います。」
「おやァ、トキ君はボクが参加するのは嫌なのかな?」
「そうではなくて!」
「いいじゃないの〜!若い子たちに囲まれてボクも飲みた「隊長」い…」

ギギギとゆっくりと隊長が振り向いた先には、八番隊副隊長の伊勢七緒が立っていた。今日の飲み会は彼女も参加のはずだったが、この様子だとどうなんだろうか。




「なんだァ、京楽隊長も連れてくればよかったのに!」
「仕事してもらわなくては困りますので。」
「七緒さんも苦労してるッスね。」


結局、京楽隊長の見張りをしようとした副隊長だったが、ちゃんと仕事しておくからたまには息抜きしておいでと言う隊長の計らいで、こうして一緒にお店にやってきたのだった。
案内された席に行けば、よくもまぁこの面子を集められたもんだ。数名の副官と第六席以上の席官たち。いつもの顔ぶれだが、よくよく見てみれば圧巻だ。
ほら、近くの席の隊士がビビってるじゃないか。私もこの人達と同じ人種だと思われてるのか。勘弁してほしいな。


「トキ!こっちで飲もうぜ!」
「一角さん、今日も負けませんよ。」
「望むところだぜッ!」
「君たちは美しく飲めないのかい?」
「何言ってんのよ、弓親!花より団子よ!ガンガン飲むわよ!!」
「花より男子の使い方合ってるのかな。」
「うるさいわね、遊!」
「風雅さん、何か食べますか?」


猛者の中に癒しの雛森副隊長がいるおかげで、少し雰囲気がかわるから助かる。
いつも隣にいるはずのイヅル君はどうやら仕事が終わらない様子。どこの隊も苦労してるわね。
檜佐木くんは相変わらず乱ちゃんのお隣をキープか。あれ…


「阿散井くんは??」
「あぁ、なんか任務で朽木隊長と現世に向かうんだとかで、準備があるからって今回はパスするって。」
「そうなんだ。」


錚々たる面子の飲み会も夜の空が深くなっていっても続いた。
まだ飲むんだと言う乱ちゃんは一角くんと弓親くん、そして檜佐木くんをも巻き込んで二軒目に向かった。
乱ちゃんの巻き添えにならないようにうまく逃げ切った七緒副隊長とトキと隊舎に向かって歩いていた。


「副隊長、息抜きになりましたか?」
「えぇ。遊さんも気分転換になりましたか?」
「え…あぁ、そうですね。」
「ここ最近元気がないってみんなで話してたんです。」
「私がですか?」
「はい。遊さんには笑っていてほしいですから。」


気づかぬうちにみんなに心配をかけていたようだ。
後でお礼を言って回らないといけないな。


―私はひとりじゃないです。

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