【31】強いってどんなものなのか



負傷者を肉雫ロ妾の体内に取り込むと参りましょうと卯ノ花隊長は手を差し伸べてきた。その手を取り肉雫ロ妾の上に乗らせてもらう。卯ノ花隊長と関わりがあったとはいえ、肉雫ロ妾に乗ることはおろか見ることすら初めてだ。

副隊長だけは肉雫ロ妾の上にとトキに指示する隊長は優しい顔をしている。隊長と虎徹副隊長を見ているととても羨ましいと思う。
もし、もしも生きていたなら、私も鳳隊長と一緒に…


「遊さん、私の顔に何かついてますか?」
「あ、いえ!副隊長の治療を始めますね!」


よかった、軽く突かれて気を失っただけみたい。一応、念の為に治療をしておこう。


「治癒が相変わらずお上手ですね。」
「隊長からそう言ってもらえるなんて光栄です。大切な事を卯ノ花隊長から教わりましたから。」


霊術院に通っていた頃、戦闘力が高いことだけが強さではない事を卯ノ花隊長から教わった。
もちろん弱くていいということでは無い。仲間を救えなければ不利になる。仲間を救うためには自分が生きていなければいけない。生きているためには強さが必要。ただ強いだけでは仲間は救えない。
治癒も強さの一つ。


「…ん…」
「気がつかれましたか、虎徹副隊長」
「風雅さん…!卯ノ花隊長…!私…」
「副隊長、まだ安静にしていてください。」
「あなたは一番優しく衝かれたようですがまだあまり暴れないようにしなさい。」


ちょうど四番隊の隊舎が見えてくると、卯ノ花隊長に降りるよう指示された肉雫ロ妾は地に降り立った。
駆け寄ってきた四番隊の隊員達は少し心配そうな表情だけど、頼もしそうに見えるのは日頃の隊長の指導の賜物だと思う。
腹の中に入れていた負傷者を吐き出した肉雫ロ妾は鞘へと戻って行った。背中に重く痛い霊圧を感じて振り向いた先には壊れた双極が見える。


「…なんて霊圧…。あそこにまだ誰か…?」
「先程の旅禍と朽木隊長が戦いを」
「!!」
「他の隊長方も皆さんのそれぞれ戦いに向かいました。」
「とても私たちだけでは止められそうにもないですが...」
「ついておいでなさい、勇音。遊さんも。少し向かいたい処があります。」


強い眼差しの卯ノ花に着いていく。
何かを知っているその背中にただ従うしかなった。

何も語らぬその背中に着いて行くしかないものの、何か変な感じがする。気づけば薄ら嫌な汗すらかいている事に今気づいた。
意識しなくても感じる霊圧が物語っている気がする。知っている霊圧に自然と愛刀を握る手に力が入るのが自分でも分かる。何が起きているのか想像もできない。カタッと少しだけ鞘の中で音がなって、時鳥もこの異常事態を感じとっているんだ。それが危険だと言っているのか、落ち着けと言っているのかは判断がつかないけど、少しだけ深く息をして警戒の姿勢も保つことにした。

たどり着いた場所は足を踏み入れたことの無い領域。そこは完全禁踏区域、清浄塔居林だった。


「隊長、ここは…」

ドンッ!!!!!

「「「!!!」」」
「この霊圧は!!!」
「遊さん!!」


―理解は出来ても持ち合わせてはいないんだ。


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