【0】君に聞かれた花言葉の意味を






「勿忘草の花言葉って知ってる?」
「わすれなぐさ…?」
「うん。」


久しぶりに一緒に夕飯を食べた帰り道。道端に咲く青い勿忘草を見つけた遊がこの俺に花言葉なんぞ聞いてきよった。


「聞いたことない?」
「ないなぁ。」
「"私を忘れないで"」
「なんや、なんか切ないなぁ。」


遊は少し寂しげにその花を指先で触れながら、離れてしまっても私の事忘れないでねと言い出した。
忘れるわけないやろ。なんで俺がお前の事忘れんねん、アホかって少し乱暴に髪を撫で回してやった。


「あー!せっかく今日久しぶりの"でえと"だから、綺麗に纏めたのに!!」
「おぉ、可愛いこと言うやんけ!でも誰や、"デート"なんちゅう言葉教えたんは!!」
「リサちゃん」
「せやろな!!アイツしかおらへんわ。っちゅうか、遊!離れてしもうてもって、5日間現世任務に行くだけやんか。大袈裟や。」


5日間も会えないのに寂しくないのかってわーわー騒ぎよって。
遊と付き合うて1年経った。もう遊以外とは想像もつかへん。結婚したいって言うたらなんて言うやろか。…まだ怖くて言われへんな。


「心配せんでも遊の事は忘れへんで。」
「私も!約束ね!」



あの日指切りした時の君を今も忘れない。



―まだ分かってなかった。


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