【1】せっかくあなたに会えたのに
「真子さん…」
「誰や…!?」
目の前に真子さんがいる。私が名前を呼べば驚いた表情でこちらを見た。
「驚いた?やっと会えた…」
「あんた誰や」
「え…」
気づけば目の前に剣先を向けられていて、そこには私の知らない真子さんがいた。恐怖で震え始めた体と吹き出る汗、信じられない状況に涙が溢れだしそうだった。
「なんで俺の名前知っとんねん。」
「…し、真子さん、…私の事忘れちゃったの?」
「だから、誰やねんて…。あんたの事なんか知らんで…」
「そんな…」
100年待った結果がこれ…?
私は一度も忘れた事なんかなかったのに…
あなたにとって私は…
「なんや知らんけど、死んでもらうで」
「!!」
刃が首元めがけて振り下ろされる。
「やめてーーーーーーーー!!!」
「遊!!遊!!」
「…ト、キ?」
「よかった…。ずっと魘されてた。凄い汗だぞ。」
「トキ…!!」
夢だった。でも、リアルだった。
抱きついた私の背中をトキがゆっくりと撫でてくれたおかげで、少し荒かった呼吸も吹き出てた汗もだいぶ落ち着いてきた。
その手を止め、急にトキが立ち上がった。
「どこ行くの…?!」
「水を取りに行くだけだよ。ここで待ってて?」
「嫌…一緒に行く…」
「…わかった。じゃ、行く前に汗がすごいから着替えよう。」
ひとりにしないで。
―それは悪夢のような白昼夢だった。
prev next
back