【2】期待している以上に




着替えを済ませて気分転換しようとトキと外に出た。少しだけ水を飲んで、心を落ち着かせる。あれは夢なんだと必死に自分に言い聞かせた。


「おや、こんな夜遅くに二人で散歩かい?」
「京楽隊長、こんばんは。」
「お疲れ様です。」
「何か嫌な夢でもみたのかな、遊ちゃん?」
「!…何故わかったのですか?」


これでも僕は隊長なんだよーと笑う春水さんに少し肩の力が抜ける。きっと私の霊圧の変化に気づいて心配してきてくれたんだ。こんな夜中に申し訳ないな…。


「彼らが生きているって聞いたんだろう?」
「…はい。あの、隊長は…知っていたのですか?」
「いやぁ…どこかで生きているとは思っていたよ。ただ確証がなかった。それだけの話しさ。」
「…私は、死んでしまったとばかり思っていて、みんなが生きていると信じる事も出来なかった…。」
「まぁ、仕方ないんじゃないかい?そういう風に報告されればあの状況だったし、そう思っていたとしても誰も責めやしないさ。」


そう言って夜空を見上げる隊長の羽織がゆらゆらと揺れていた。今日は夏とはいえ少しだけ肌寒いようで風邪ひく前に部屋に戻るんだよと言って帰っていかれた。


「遊、隊長の仰っていた通り、仕方ないこともある。だから、これからの事を考えよう。…あと、もしもあいつと再会して、望んでいるようにならなくても」
「分かってる。…死にたいなんてもう言わないよ。」
「分かってるならいい。もしもの時は私が傍に居ることを忘れるな。」


先に戻ると言って立ち上がったトキを見送る。落ち着いたのを見て私を一人にしてくれた。


真子さん、今何してるの?元気かな。リサちゃんや鳳先輩も一緒にいるんだよね。ひよりちゃんもいるなら、大丈夫かな…。

生きていると分かったら途端に不安になった。嬉しかったはずなのに、あんな夢を見たら必ずしも向こうが私と会いたがってるとは限らないという事をより実感してしまう。
それが現実だとしたら私はどうするんだろう。



―不安の方が積もり積もっていく。

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