【3】誰だって




「乱ちゃん」
「あら!遊、どうしたの?あんたが十番隊まで来るなんて珍しいじゃない!」


珍しく遊から私を訪ねてきた。あの表情じゃ何かあったのね。


「松本」
「すみません、日番谷隊長。松本副隊長をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「いや、俺が出る。風雅はゆっくりしていけ。」
「いってらっしゃ〜い」
「茶くらい出してやれよ。」


気を利かせて席を外してくれた隊長には感謝しないとね。まぁ、雛森の所に行くんだろうけど。
遊の事を中に入れて座らせて、お茶でいいわよね?と聞けば遊はありがとうと小さく笑った。
何があんたをそんな表情にさせてるの?


「で、どうしたの?」
「え?」
「何かあったからあんたからあたしに会いに来たんじゃないの?」
「…そう、です。」


私が出したお茶を一口飲んだ遊は少しずつ話してくれた。夢での話を。


「私はずっと皆を思い続けてきた。…でも、生きているとわかって、あんな夢を見て目を覚ました時…、必ずしも皆と両思いであるとは限らないって、すごく痛感した…。」
「遊…」


先日の騒動の中で遊に吉報が入ったことを聞いた。あの子がずっと思い続けてきた人達が生きていると。
どんな形であれどそれは遊にとっては大きな事実であり、望みであり、願いが叶った瞬間。
…なのに、まだこの子は悩まなければいけないの?


「でも、結局の所…」
「?」
「…私は自分が傷つくのが怖いだけなのかもしれない。」
「!!」


―自分が一番可愛いものなのに。

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