【4】掴める時に掴まないと




いつも通り事務処理をしていると、円乗寺三席から京楽隊長が呼んでいるとすごく嫌そうな顔で言われた。


「あいつ、いつか殴りたい。いいかな?」
「だめ。」
「なんで?あいつ、遊のこと舐めすぎだ。遊の方が実力は上なのに。」
「まぁまぁ、落ち着いて。」


隊首室の扉を叩き、どうぞーと言う隊長の声に失礼しますと声をかけて中に入ると、なんとも言えない表情の隊長と乱ちゃんがいた。


「…何事ですか?」
「いや〜、まあ、その、なんて言うか…遊ちゃんに任務と言うか…」
「任務…ですか?」
「そうよ!遊!現世に行くわよ!」
「え!?」


どうやら思っていたよりも状況が変わるのが早かったらしい。さっき隊長達が緊急招集されたのそういう事か。破面の成体が完成してしまった…。


「…で、五席の私と六席のトキがなぜ現世に?」
「だって!チャンスじゃない!」
「日番谷隊長から乱菊ちゃんは一人で見きれないから遊ちゃんも貸してくれって事なんだけど…」
「なるほど…」


遊ちゃんにはトキくんがいないといけないしと言う隊長と、チャンスチャンスと言う乱ちゃんにもはやため息しか出なかったから行きますと返事をした。
隊首室を後にして、乱ちゃんに両肩を掴まれて詰め寄らている。


「…な、なんでしょう?」
「遊、会いに行くチャンスよ!」
「!」
「なるほど、その為に私達を巻き込んだわけですね。」
「巻き込むなんて言い方はないんじゃない?トキだってチャンスだと思うでしょ?」
「…まぁ。」


現世に行ける。会いに行ける。会いに行けるけど…
会ったらどうしよう…。どんな顔すればいい?なんて言う…?


「遊、なる様になるわよ!会いたいなら会いに行くの!会えるんだから…」
「!」
「松本副隊長の言う通りだと思う。だけど、約束だけは忘れるな。」




―チャンスの神様は前髪しかないんだって。
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