【7】諦めることは



「みなさん、いくらなんでもそんなに騒がれると霊圧が漏れマス…」
「そんなやわな結界やないやろ。」
「!!…お前ら静かにしろ。あいつこっち見とる。」
「!?」


遊の隣にいたイケメンがじっとこっちを見とった。
ハッチの結界は問題ないはずやし、遊も気づいてる様子もないのに…
俺は今あいつと目が合っている。


「なんや、いけ好かないやっちゃのぉ。」
「嫉妬かい?」
「ローズ黙っとき、真子はそういう奴や。」
「お前も黙れ。」
「まぁ、イケメンなのは認めよう。だけど、僕の美しさには勝てないと思うけどね。」
「ローズ、黙っとき。」


様子を見とったら、どこかの死神について行った遊があいつの元に戻ってきて不思議そうに何かを話してる。
あぁ、遊が目の前におる。こんなに近くにおる。100年前なんて昨日の事の様や…。


「あ、手繋いだね。」
「見せつけられとるな、真子。」
「あいつホンマになんやねん…」


こっちを見つめとったイケメンの兄ちゃんは駆け寄った遊の手を取って俺達から離すかのように連れ去っていった。

100年前最後に見た時よりも幾分か綺麗になった遊の姿に柄にもなく胸が高鳴った。
あぁ、やっぱり俺はあいつが好きなんやなぁなんて呑気に思うた。
俺以外の男と幸せに過ごしとるんかと思うと胸が軋む。やけど、それで良かったんや…。


「おかえりー!」
「あぁ…」
「くっら!!なんやねん!」
「まぁ、ひより分かってやれ」


あの日、決めたはずや。
100年前のあの日、俺は遊のおらん世界で目を覚まして、このまま藍染を放っておけばいつかは遊の身にも危険が生じると思うた俺はどうにか尸魂界に戻ろうとした。
せやけど、あの時の俺達にはまだ虚化を抑える術すらなくて、遊を巻き込むことだけは避ける為に遊のことは100年前に諦めてきたはずや。


「あほ、俺は元気や。」
「ほんなら、辛気臭い顔すんなや。」
「そろそろあちらさんが動き出す頃や。みんな準備しとき。」


―簡単なことじゃない。

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