【8】久しぶりに見たその目は




トキが遠くを見つめたまま動かないから、ひとまず一護くんの家に行こうと言う乱ちゃんに先に行ってもらった。


「トキ?どうかしたの?」
「…いや、何も無い。行こう。」
「え?あ、うん…。」


私の手を握って前を歩くトキはずっと黙ったままで、きっと言う気がないところを見ると本当に何も無かったのか、それとも私には言えない何かがあったのか…。


「あ、日番谷隊長。」
「お前らどこにいたんだ。」
「すみません。ちょっと探し物に…」


一護くんの家の屋根にいた日番谷隊長に声をかければすごく疲れた顔で、なんだか申し訳ない気持ちになった。やっぱり乱ちゃん達問題でも起こしたのかな…。


「あ、遊さん!」
「一護くんお邪魔してます。」
「遊さんも大変だな、あいつらのお守りなんだって?」
「あー、いや、うん…そうだね。でも、日番谷隊長に比べればどうってことないかな…」
「そうか。遊さんは人探しだって聞いたけど、見つかったのか?」


首を横に振れば、一護くんの眉毛が少しだけ下がった。出来ることがあれば手伝うから何でも言ってくれと言ってくれる彼は本当に優しい人だと思った。

一護くんの家でひと騒ぎした後、全員は滞在出来ないという事でそれぞれがその場を後にした。乱ちゃんは織姫ちゃんの家に行くらしく、用が終えたら合流するようにとだけ言い残して去っていった。


「阿散井くん、喜助さんの所にいくの?」
「あぁ…色々と聞きてえ事あるしな」
「そうなんだ。あの、ついていってもいいかな?」
「ああ。そういえば、遊も会いたがってたな。」


じゃあ…と朽木さんと一護くんに手を振れば遊殿に手は出すなよという朽木さんを阿散井くんが馬鹿野郎と怒鳴っていた。
阿散井くんの片思いが実るのはまだまだ先みたいだ。


「浦原商店…ここに喜助さんが…」
「みたいだな。」
「なんだか変な感じ。」


100年振りに会えるという緊張感やら期待感やらで胸が鳴りながらも足は前に進んだ。少し進んだところで足音が足りない事で振り向くことになった。


「あれ?阿散井くん行かないの?」
「まぁ、なんだ…折りいった話もあるだろ。ゆっくり話して来いよ。俺は終わるまでここで待ってる。」
「それでは私もここで待ちます。遊一人で大丈夫?」
「うん。…ありがとう、二人とも。」


古びた戸を少しだけ叩くと、薄ら開いた隙間からいらっしゃいと懐かしい顔が私を出迎えた。


「そろそろ来る頃だと思ってましたよ、遊サン。」
「お久しぶりです、喜助さん。」


―変わらず奥に優しさが住んでいた。

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