【11】その輪の中に



一日が経った。総隊長がお呼びだと聞き織姫ちゃんの部屋で回線の設置をすることになり、今準備している。
乙女の部屋にこんなものを設置してよかったのだろうかという疑問は心の中に留めておくことにしよう。


「何これ、冬獅郎くん!?」
「そうなるよね、普通。」
「…ちっ。間の悪い時に帰ってきやがったな…」


隊長が通信を始めると画面の向こうには総隊長、浮竹隊長に京楽隊長と七緒副隊長がその後ろに控えていた。


「あ、遊ちゃーんトキくーん!」
「隊長!総隊長の前ですよ!」

「総隊長、京楽隊長の御無礼申し訳ございません。気にせず進めてください。」

「うむ。…今回緊急に回線を用意してもろうたのは他でもない。藍染惣右介の真の目的が判明した。」
「…藍染の…真の目的…!?」


淡々とトキにスルーされて総隊長の後ろでへこむ京楽隊長とは裏腹に重要な話が始まった。気を使って出ていこうとする織姫ちゃんを総隊長が引き止めて、藍染さんの真の目的についてお話してくれた。

王鍵―
その材料こそが藍染さんの目的。重霊地である空座町を人をこの世界から消そうとしている。
絶対許せない…。


「その為の護廷十三隊じゃ。」

止める手だてがあるのかと訴える彼女に総隊長はそう答えてくださった。
震えながらぐっと力の入った織姫ちゃんの手を握ると彼女は私の方を見て少しだけ安堵したような顔をした。


「…現世側の力添えも必要じゃ。…そう、黒崎一護に伝えてくれるかの」
「はい!」
「それでは私が同行致します。」
「風雅、無限頼んだぞ。」
「「はい」」


一護くんに伝えに行くと言う事で織姫ちゃんに同行することになったが、私は未だに一護くんの霊圧を上手く察知することも出来ずにいた。ぼやっとしてイマイチ位置を確認できない。
なのに、彼女はしっかりした足取りでどこにいるのか見えているかのように走っている。


「…あそこだ…」
「え…?」


目の前には大きな倉庫があった。なんか変な感じはあったけど、何かと思えば大層な結界が施されていた。
それに気づいたのは織姫ちゃんに呼ばれ、結界があるけどすり抜けられそうだと告げられた時だった。少しばかり人より察知能力に長けていると思っていた自分がこの結界に気づけなかったことにうっすら汗をかいている。



「何かあった時のためにトキはここで待機してて?」
「わかった。何かあればすぐに呼んで。」
「うん。」
「じゃ、遊さん私の手を握っててくださいね!」


行きます!と彼女に引っ張られながら入った結界は思いの外簡単にすり抜けられた。


「…不思議な力ね…」
「盾舜六花の盾に似ていたので上手く行きました!中に入ったらより黒崎くんの霊圧を感じます!行きましょう!」


確かに。さっきはぼやっとしていた彼の霊圧しっかりと察知することが出来た。そして、微かに懐かしい霊圧をも感じることが出来て、心が揺れるのがわかった。
会いたかった。でも、こうも簡単に会える事になるなんて思ってもいなかったから心の準備が間に合っていない。
地下へと続く階段を見つけ躊躇することなく降りていく織姫ちゃんの後について行く。


「人間!?」
「ああ…」
「一護くんいた…?」
「遊…!?」


―私も入りたい。
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