【12】心は変わりゆくもの



「…あ…、…え〜〜〜っと…おトイレどこですか…? …なんちゃって」
「いや、織姫ちゃん…それは無理がある。」


やっぱりそう思いますか?だなんて苦笑いする織姫ちゃんのおかげで、揺れていた心を落ち着かせることが出来た。
しっかりと向き合わなきゃ。
向こうには羅武さんに鉢玄さん、拳西さんに白ちゃん、リサちゃんと鳳隊長、…そして、真子さんがいて、突然現れた私たちを凝視しているのが見えた。100年振りの彼らに鳥肌が止まらない。上手く息できているだろうか。


「何してんねん一護っ!!」
「ぐッ…!くそ…」
「黒崎くん!!」
「…井上っ!?」


ひよ里ちゃんだ…。少し向こうの方で大きな音と霊圧を感じてそちらを見れば一護くんと修行を行っているようだった。
ひよ里ちゃんの存在が織姫ちゃんの足を前に進ませないようだったので、大丈夫だから行っておいでと言ってやれば恐る恐る降りていき、みんなに一礼して一護くんのそばに駆け寄っていった。


「なんや、久しぶりやな…遊」


最初に声をかけてくれたのは、リサちゃんだった。
この声に何度も私は背中を押してもらえた。帰ったらこの事を京楽隊長にお伝えしたい。七緒さんも知ったら喜ぶだろうな。


「遊ーーー!こっち降りてきなよぉー!」
「白ちゃん…」


人懐っこくて、いつも私に元気をくれた白ちゃん。
階段を一歩一歩降りていく。
ふと前を見ると気だるそうな彼と目が合って胸の鼓動が高鳴った。長かった金の糸は短くなっていたけど、昔とはそう変わらない彼がいた。


「皆さん、お久しぶりです。お元気でし「お前は何しに来たんや?」
「ちょ、真子!」
「…まさか、俺らに会いに来たんとちゃうやろな?」
「っ…そうだとしたら、どうなんですか?」
「……がっかりや。」
「しんずぃ!なんでそんな事言うの!?」


冷たい刃が首に当たっているような感覚。肺がひゅっとなるような感じがして、全身から血の気が引いていく。

あぁ、私は何を期待していたのだろう。例え夢に見たように刀を振りかざされなかったにしても、この展開は想像出来たはずだ。


「だって、副官クラスの奴が自分の感情で動いたりせんやろ?…なぁ、遊?」
「…そう、ですね。」
「心配せんでも俺らは元気にやっとったで。」
「……一つだけ聞いてもいいですか?」
「なんや?」
「私の事…考えてくれてましたか……?」
「…あほか。100年も経っとるんやで?わかるやろ。」


ああ、どうしよう。想像していたより辛い。
真子さんなら当然のように優しくしてくれると思っていたし、過去の彼ならそうしたと思う。
でも、彼の言う通り…時は無情にも100年経った。
本当に私だけ止まっていたんだ。

いやだな…泣きそう。泣いたってみんなに迷惑かけるだけなのに…泣くな泣く泣くな…!


「何かあれば呼んでって言ったのに。」
「っ!お前いつの間に、どうやって…!?」


涙が溢れてしまいそうになった時、急に視界が暗くなった。後ろから手で目隠しをされても安心出来たのは、聞こえてきた声がトキのものだったから。


―そんな事も考えられなかったんだ。


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