【14】かなしいのなら



織姫ちゃんに外で待っているとだけ告げて出てきた。私の気持ちとは裏腹に空はとても青く晴れている。涙が落ちないように空を見上げる私にトキが言った。


「遊、もういいよね。」
「……」
「ずっと遊が願ってたことは叶った。…結果はどうあれ。だから…もうあんな奴のために泣くな。」


そうだ。高望みしすぎていた。
生きているのを確認できただけ良かったと思わなきゃいけないのに…。


「違う組織の奴だと思った方がいい。」
「…そうね。」
「あいつはもう死神じゃない。」


トキの言葉が私に重くのしかかった。
ねぇ、真子さん、私…どうしたらいいの…?
あなたを好きでいる事を止められる自信がないよ…。


「お待たせしました!」
「織姫ちゃん、お疲れ様。」
「…ここにおったか…遊、井上。」
「!」
「夜一さん…」


突然現れた夜一さんは喜助さんに頼まれて織姫ちゃんを探しに来たそうで、地下勉強部屋に来るようにとの事だった。
喜助さんは今は何を考えているのだろうか。


「遊も来るか?」
「いえ、私は一旦隊長達と合流しようと思います。織姫ちゃん、大丈夫?」
「はい!夜一さんもいるので大丈夫です。着いてきて下さって、ありがとうございました!」


丁寧にお辞儀をしてくれた織姫ちゃんとは別れて、隊長達の元に向かう。
その間、私もトキも無言だった。
生きていた上に久々に会えるかもしれないという喜びと嬉しさと緊張で気持ちが高揚していた私は、落ち込むことなど考えていなかった。
だから、今の自分の感情をどう処理したらいいのか分からない…。


「あら、遊!織姫は?」
「乱ちゃん…」
「…どうしたの?」
「遊の願いが叶いました。」
「会えたのね!?」
「…うん。」


100年望んできた事が叶ったはずなのに、素直に喜べない。ここまで励ましてくれたり、背中を押してくれた乱ちゃんに本当に感謝してる。その分、こんな結果になってしまった事もすごく申し訳ない気持ちがあった。


「遊…泣いていいのよ。」
「!……っ」
「頑張ったじゃない!理想通りにはいかなかったみたいだけど…。」
「っ…ぅん…っ…」
「悲しかったでしょ?辛かったなら、別に泣いたっていいのよ。誰もあんたを責めたりなんかしない。」


泣いてもいいんだ。
同じ立場ならきっと辛いと思うって乱ちゃんが言って抱きしめてくれた。酷く重かった気持ちが軽くなった。
乱ちゃんの泣いてもいいと言う言葉で、私の目から涙が溢れ出て止まらなかった。


「落ち着いた?」
「うん…ありがとう…。」
「いいのよ!遊に頼られて嬉しいし?」
「ふふ、私も乱ちゃんに頼られたら嬉しいな。」
「まったく、こんなあんたを突き放したのを後悔させてやりましょ!」


たくさん泣いたらたくさん食べなきゃねという乱ちゃんに少しだけ笑ってしまった。
みんなで夕食を食べようという事になり、喜助さんの所に行っている織姫ちゃんを迎えに行くように頼まれて、浦原商店に向かった。



―泣いてもいいと教えてくれた。

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