【17】自分の足で



先刻、織姫ちゃんと訪れた倉庫に朽木さんと到着して、結界のことを話した。


「遊殿…中に居る者は信用出来るのですね?」
「はい。大丈夫ですよ。」
「遊殿の知り合いのようなのでそこまで疑ってはないのですが…」
「?」
「何故、遊殿はその様に辛そうな表情をされているのですか。」
「っ!」


私、そんなに酷い顔をしていたのか…。
不覚だった。
私は何も成長していない。結局、100年前に置いていかれたまま、私の時も止まったままだったんだ。


「彼らは元死神で…私の大切な人達だったの。」
「!…遊殿が100年前に亡くされたと仰っていた者達ですね?」
「そう。…生きていてくれて嬉しかった。みんなはずっと前を向いて生きてきた。…だけど、私はずっと後ろばかり向いて生きていた。」
「遊殿…」
「私はもうみんなとは一緒にいられない…。」


初めて朽木さんに心の内を明かした気がする。
そんな話をしていると織姫ちゃんが結界をすり抜けて出てきた。


「…朽木さん、遊さん…!」
「おかえりなさい、織姫ちゃん。」
「あ…あのね朽木さん!この中は実は…」
「…構わん。遊殿から少しだけ聞いた。」
「それじゃ、二人とも行きましょうか。」
「…はい!」


だけど、今共に戦う仲間はいる。その為に力は尽くしたい。そう思えるだけ、少しは前に進めてきたのかな。
私は気持ちを奮い立たせて穿界門を開いた。






「あれ、檜佐木くん。どうしたの?」
「あ、遊さん。今月の瀞霊廷通信を各隊に配布してたんすけど、浮竹隊長が不在で…」
「それなら隊舎の裏にいるよ。私も今からそこに行く予定だから一緒に行こう?」
「本当?よかった!」


あれからひと月。現世での目的を果たした私は元々の業務に戻ることにした。
ありがたいことに、帰ってきた私の様子を見て隊長は何も触れずにいつも通り接してくれた。

頬に69の刺青がはいった彼は九番隊副隊長の檜佐木修兵くん。彼が護廷十三隊に入隊して初めて見た時はビックリした。


「え…69…リトル拳西さん…」
「え!?これの刺青見たことあるんスか!?」
「ぅわ!あ、ある!」


私が69の刺青のことを知っていて、檜佐木くんはたいそう興奮していた。
拳西さんに憧れて死神になった彼は時間を見つけては拳西さんの話を聞きに来た。そうしていく内に仲良くなり、姉弟のような関係になっていた。

そんな彼は信頼していた上司に裏切られた。心に傷は負ったものの、自分の足で立ち、前に進む力がある。
私がすごいと思うと言ったら、彼はそんな事ないスよと少しだけ苦しそうに笑った。


「ほら、あそこに。」
「お、いたいた。何してんすかこんなところで?」
「ああ、檜佐木君か。」
「隊長がいらっしゃらなくて困ってたみたいなので。」


ここは朽木さんと織姫ちゃんが決戦に向けて修行している場所で、浮竹隊長はよく見にいらっしゃる。

それぞれが決戦に向けて準備している。


―まだまだ一人では立てそうにない。

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