【18】手を伸ばせば



朽木さんと織姫ちゃんに会いに行くつもりだった私は檜佐木くんを置いて二人の元に向かった。


「お疲れ様。今日も頑張ってるね。」
「遊さん!」


"空座北部に十刃と見られる破面!!数は4!!日番谷先遣隊と交戦状態に入りました!!"


「「「!!?」」」
「朽木っ!」
「はい!!こちらにも今報告が入りました!!」
「鬼道衆が開門処理に入っている筈だ!隊舎前の穿界門に急げ!!」
「はい!」
「まって朽木さん、あたしも…」
「お前は駄目だ、井上。」


そう。地獄蝶を持てない織姫ちゃんは穿界門を通ることが出来ない。浮竹隊長はすでに織姫ちゃんの為に界壁固定の指示を出していた。
直ぐに駆けつけることが出来ない事が織姫ちゃんの表情を暗くした。


「…織姫ちゃん、そんな顔をしないで?代わりに私が先に行って、織姫ちゃんがいつ来ても大丈夫な様にしておくから。」
「!」
「先に行って待っているぞ。」
「…うん…!」


朽木さんと二人で穿界門へと急いだ。
崩玉の覚醒にしては早すぎる。こちらはまだ準備が終わらないというのに、大丈夫なのだろうか…。


「トキ!!」
「ここにいるよ。」
「私は今から空座町へ行くわ。隊長にこの事を伝えて欲しいの。」
「行くんだね…」
「うん。」
「…分かった。伝えたら直ぐに私も駆けつけるから。いいね?」


一度だけ強く頷けばトキは溜息を残して消えた。
行きますと朽木さんが言うと穿界門が開いた。

空座町に着くと十刃の気配を感じた。
3体の方は隊長達の霊圧を感じたので、朽木さんと一護くんの方に加勢しようと急いだ。


「心配すんな。この距離での虚閃だ。仮面を被る頭ごと消してやるよ!」
「喰い止めろ 時鳥」
「!!…な…!?」
「次の舞 『白漣』」


十刃は朽木さんの袖白雪によって一瞬にして凍らされた。敵の刀で手を地面に固定されてしまった一護くんが驚いた表情でこちらを見ていた。


「私が抜きましょう。」
「はっ…はっ…わりぃな、遊さん…」
「痛そうですね…」
「ルキア、凄え威力だな…。遊さんもあの技はなんだ…あいつの手…固まって…」
「喋るな。遊殿の手を煩わせるな。」


思ったよりも深く突き刺さってるな…。抜いてから治療するにしても出来るだけ一護くんの傷は浅くしてあげたいし…。とりあえず、朽木さんと話しててくれてるから私はこっちに集中して

ガシャア!!!!!


「「「!!!」」」
「…ナメんじゃねえぞ、死神…。」
「遊殿!!」
「薄皮一枚凍らせて…それで俺を殺したつもりか…!?甘えんだよ!!!」
「遊さんっ!!!」


ヤバい。油断してた。
これは確実に私死んじゃうな。
死が目の前になると冷静になるもんなんだ。
トキに怒られちゃうな…。
なんか遠くで一護くんと朽木さんの声がして、全てがスローモーションに感じて、私は死を覚悟した。


バンッ!!

ドォ……ン!

「…やれやれ。ホンマは死神の戦いに手ェ出すんいややねんけどなァ…」
「!」
「しゃアない」


―この手を握ってくれますか。

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