【19】過去は過去



「こんだけ近くでドンパチやられたらシカトするワケにもいかんしなァ」
「…平子…」
「…何だてめえ。こいつらの仲間か?」
「なんでやねん」
「…じゃあ何だ」
「なんでもええやろ」


私は今確かに死ぬところだった。
真子さんが来なければ確実に殺されていた。
でも、きっと、ただここで私に死なれると後味が悪いから…だよね?
そうじゃなければ、仲間でもないのに助けには来ないよね…?


「それで躱したつもりか、あァ!?」
「全く血の気の…多いやっちゃな」
「!!」


仮面…!?あれが虚化…。
私は久々に見る真子さんの戦う姿に見入ってしまっていた。仮面があろうが無かろうが、真子さんは真子さんで、私はやっぱりあなたが好きだと、不謹慎にも思ってしまった。


「…済まんなァ破面。俺はいまめっちゃ腹が立っとんねん。あんた強そうやし…加減は無しや。」


真子さんが虚閃を放った後は一瞬の出来事で、真子さんと交戦していた破面は突然現れた別の仲間と共に反膜の光の中に消えた。


「遊殿、大丈夫ですか!?」
「え、ええ、私はなんともありません…。それより、一護くんを…」
「…着いてきィ、ハッチなら治せるやろ。」


気を失った一護くんを抱える真子さんの後ろを着いていくしかなかった。
倉庫に着くと、なんとも言えない表情のみんなが外で待っていた。


「ハッチ!一護を頼む。」
「はいデス。」


きっとみんながあの仮面をだせるのね。虚化をあそこまで使いこなすにはどれほどの努力をしてきたのだろう…。

鉢玄さんは一護くんを治療を始めて、私と朽木さんはそれを見ているしか無かった。

副鬼道長であった鉢玄さんですら一護くんを治癒することは難しいらしく、虚に近い霊圧を持つみんなから離れることが一番最善だと言う言葉がなんだか切なく感じた。
もしかしたら、私の斬魄刀の力でなら治すことができるかもしれない。そう思い時鳥に手をかけた。


「あの技を使うつもりならお止め下さい。」
「トキ…。」
「またお前か…。いきなり現れたらビックリするやろ。」


斬魄刀を使おうとする私の手をトキが押さえた。今すぐ尸魂界に戻るようにと隊長からの伝言だという。


「でも、…あの、一護くんを」
「落ち着いて。冷静な判断をお願いします、風雅五席。」
「「「!?!?」」」
「すみません…。行きましょう。朽木さん、ごめんなさい。あとは頼んでも?」
「あ、はい!」


トキの一言で冷静になった私は振り向くことなく穿界門をくぐる事が出来た。後ろから聞こえた真子さんの声に知らないふりをしながら…


「遊が…五席やと…?おい、イケメン。どういう事や?」
「…あなたには関係ない。」


―私も今を生きている。

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