【29】淡青い花の記憶
私たちは勝った。
多くの犠牲を払って…。
そして、私はまた生きている。
「行かなきゃ…」
「遊…?」
「色んなものを投げ出して来ちゃったの。卯ノ花隊長を手伝ってくる。」
「…そうね。」
「トキ…?」
「ここにいるよ。」
トキを呼んで乱ちゃんのことを頼むと人使いが荒いなと言いつつも承諾してくれた。
斬られたことを思い出したら傷がズキズキと痛くなってきた。でも、早く戻らなきゃ…。
「一先ずって…助からへんかもしれんの!?」
「鬼道に出来る事は医療と変わりありません。体構造は完治させました。あとは彼女が生きる事を諦めなければいずれ目を覚ますでしょう。」
ひよ里ちゃん、目が覚めない…?
みんなが悲しんでる。特に真子さんはひよ里ちゃんとはすごく仲良かったし…100年ずっと一緒にこの戦いのために頑張ってきた、家族同然の存在。
私、今役に立たなかったら、今度こそみんなとは一緒に居られない。
「卯ノ花隊長、私にやらせてもらえませんか?」
「「「「!!」」」」
もう何を言っても引かないのでしょう?と、許してくれた卯ノ花隊長に深く頭を下げた。
ひよ里ちゃんのそばに寄って周りを見渡した。みんなも負傷している…。それだけこの戦いが壮絶だったことがわかる。
「遊…」
「真子さん…。ひよ里ちゃんも、みんなの怪我も元に戻すからね。」
「あ、ああ…。いや、あのな…」
「100年の間の話ならまた今度聞かせてください。」
今は聞きたくなかった。
私のいないあなたの100年間の話は、良くも悪くもきっと心が揺らぐかもしれないから…。
「遊!!何をする気!?」
「乱ちゃん…みんなを元に戻すの。」
「!!あの技を使ったら、あんたは…!!」
「大丈夫!…あとの事は頼むね。」
きっとトキが乱ちゃんに言ったのね。
止められる前にやらなきゃ。
「遊、何する気なんや」
「卍解」
「「「「!?」」」」
「遡上時喰鳥-そじょうじくいどり-
子の刻 時象遡蘇-じしょうそそ-」
あたたかい光に包まれて、周りに降り注ぐのはいつの日か見た勿忘草。
一つ手にとって香りをかいでみるとみんなとの記憶が蘇った。
出会った時の事、仲が深まった時の事、喧嘩した時の事、色々教えてもらった時の事、笑ったり泣いたりした時の事、真子さんを好きになった時の事、そして、両思いになった時の事…―
全てが走馬灯の様に過ぎ去っていき、最後に見たのはあの夜の日の事。
「勿忘草の花言葉って知ってる?」
―あなたも覚えてますか。
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