【3】一難去ってまた



まさか、再びここに来ることになるとは思わなかった。


立派な薬医門。
"時園"と書かれた表札。
ここは遊の実家だ。100年前に勘当されて以来、ここに来た事はなかった。
相変わらず重そうな戸を叩くと夫人が出てきた。


「どなた様でしょうか?」
「八番隊六席、無限トキと申します。時園架絃(トキゾノ カイト)様にお目通り願いたいのですが。」
「架絃に…?なんの御用でしょう。とりあえず、どうぞお上がりください。」


豪華な客間に通された。この夫人は相変わらずだな。奇妙なものを見るような目で見られるのは気分がいいものでは無い。
まぁ、こうして会うのは初めてなのだから仕方ないのだが。


「お待たせしました。時園家二十五代当主時園架絃と申しま…お前は…!!」
「久し振りだな、架絃。」
「無限トキとは…なるほど。遊は元気か?」
「その事で相談が…」


先日の決戦で卍解を使用し、その副作用のせいで回復が出来ていないことを伝えた。
遊を治せるのは架絃しかいない。時園で遊を預かってもらえないだろうかと頼んだ。


「遊が卍解を…そうか、やはり…遊だったか…」
「ああ…架絃、その「まあ、そんな気はしていた。そんな顔をせずともよい。訳はわかった。遊は私が責任をもって診よう。連れてまいれ。」
「かたじけない…。礼を言う。」
「何を言う。私と遊、そしてお前の仲だ。遠慮することは無い。」


屋敷を出ると中から先ほどの夫人が騒いでいる声がした。
きっと架絃が事情を話したのだろう。
多少遊は嫌がるかもしれないが、これ以外助けられる方法がないのだ…許せ。

瀞霊廷に戻り、隊長に報告をした。快く引き受けてもらえてよかったねと言う隊長はこうなるとわかっていたのだろうか?
隊長に報告を終えて遊の元へと向かった。


「遊、明日から時園の家に戻る。」
「え…でも…」
「架絃が治療してくれる。」
「お兄様が…。」


時園家とはいろいろあった。しかし、遊を治せるのは同じ血が通っている架絃にしか出来ないこと。
それを遊もわかっている。だから、辛そうな顔を見せながらも従うつもりでいるんだ。


―一難で終われればいいのだが。

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