【7】ふと疑問に思ったこと



「遊ちゃん?」
「はい…?」
「ぼぅーっとしてどうしたの。」


空じゃないかぁってまたお酒を注がれる。
みんなで集まった日から数日経ち、今は数ヶ月前と同じように京楽隊長と飲んでいる。私も大概この人には甘いな。


「最近眠れないんだって?」
「どこでそれを…?」
「七緒ちゃんが君に元気がないって心配してたよ。そしたら、トキ君が眠れてないみたいだって。」
「トキってば余計なことを…」
「いやぁ、部下の事を把握するのも隊長の仕事だからね。」


もうすぐ梅雨明けだし、ジメジメして寝にくいよねぇって言う隊長の目は私を見透かしているようだった。


「聞いたかい、浮竹のところの」
「あぁ、朽木ルキアさんの事ですか?人間への霊圧譲渡の罪だとか。」
「うん。それにしても、霊圧の讓渡が重罪だからって刑が重すぎる気がしないかい?」
「…それはどういう意味ですか?」


中央四十六室の下した裁定は絶対のはず。
100年前もそうだった。あの時は疑う余地なんかなくて、知らせを受けた時には彼らはもういなかった。


「まぁ、どうなんだろうなぁって思っただけさ。返答に困るようなことを言ったね。あまり深く考えなくていいからね。」
「はぁ…」


それは、わざとですか?
考えてごらんって事ですか?私にそれを言うのは、100年前に彼らに起きた事と何か関わりがあるんですか?
わからない…、隊長は何を私に伝えたかったんだ。

用意していたお酒も底をつき、今日はこの辺にしましょうと告げ、珍しくそうだねと片づけさせてくれた隊長を隊首室の前で見送った。振り返ることなくはらはらと手を振る隊長の背中が、少しだけ似てる気がした。胸がぎゅっとして息苦しくて泣きそうになった。


「泣けばいい。」
「だから、心を読むのはやめてって言ってるでしょ…」
「少しだけ雨が、降った気がしたから…迎えに来た。」
「ありがとう」


心の雨に過敏なトキはすぐ現れて傘をさしてくれる。そんなあなたに甘えすぎだってわかってるけど、 まだ一人で歩いていくには100年じゃ足りないの。


―そちらでは雨は降るのでしょうか。

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