【6】 ずっと気になっていた



目が覚めると見慣れたようで懐かしい天井が見えた。そうだ、ここは時園の家だ…。
随分と懐かしい夢を見た気がする。


「おはよう。ゆっくり眠れたようだね。」
「おはようございます。…久しぶりにちゃんと眠れた気がします。」
「とは言っても、まだまだ眠りは浅いようだが…。さぁ、朝食だ。食べれるか?」


ゆっくり上半身を起き上がらせるとお兄様は座卓を用意してくれた。布団から出ると言ったのに病人は病人らしくしろということで、そのままいただかせてもらうことになった。
お味噌汁を一口すする。昔から大好きな味が口いっぱいに広がった。料理長は変わってないみたいでなんか嬉しくなった。


「今日の朝食は遊も食べると伝えたら、料理人達が気合いを入れていたぞ。」
「え…?」
「遊が帰ってきてくれた事が嬉しいのは私だけではないという事だ。わかったら、申し訳なさそうにするのはやめなさい。」
「お兄様…」
「それに部屋に結界を張ってある。母がこの部屋の場所も存在すらも気づくことは出来ないから、何も気にせずこの家にいていい。 」


100年前のことで時園を追い出されてからお義母様との関係はそれまで以上に悪化した。
気にしていないと言えば嘘になる。お兄様の気づかいには頭が上がらない。

食べ終わった頃にまた来ると言ってお兄様は退室していった。
気合いの入っているという料理に箸を伸ばし、順番に味わった。


「少し体調も良くなってきたか?」
「ッゴホッ!…っトキ!」
「すまない、驚かせたか?」
「もう少し気配を…ゴホッ…ご飯が、喉に…ゴホッ」


トキはすまないと背中をさすってくれて、お茶を渡してくれてた。


「架絃に頼ってよかった。」
「お兄様には感謝してもしきれない…。」
「そうだな。夫人は先代当主が亡くなって遊への当たりはよりキツくなって、100年前遊を時園家から追い出した…。だけど、今回ばかりは時園家に頼るしか無かったし、まぁ、架絃は唯一の「ねぇ、トキ…?」
「なんだ?」
「そもそも、私…100年前って何があったんだっけ…?」


どうして、こんなに記憶が曖昧なんだろう…。
戦いが終わってから皆の様子がなんだか変な気がした。
私だけどこかに置いていかれているような…そんな感覚。


―何かが前と違う気がする。

prev next
back