【11】同じ後悔なら



藍染隊長との戦いが終わり、後任の隊長も決まった。
最初はどんなは人かもわからなくて不安だったけど、平子隊長は凄く気さくな方で、でもどこかいつも切なげだった。


「遊ちゃんの事詳しくは知らないって事にして欲しいんだ。」


京楽隊長にそう言われて、なんでだろうと思った。
だって、遊さん、平子隊長達に会いたがってたのに…。
乱菊さんほど遊さんと親しい訳じゃなかったけど、それはみんなが知っていた。


「桃」
「はい、なんでしょうか?」
「桃は、何か…遊の事知らへんか?…話したいねんけど、どこにも居らへんみたいみたいやし…誰に聞いても知らんって言うねん。」
「!…あの、…すみません…私も知らないんです…」
「…そか」


遊さんは治療の為にご実家に帰られたと聞かされた。ただそれだけなのに、平子隊長も会いたがっているのに、どうして教えたらいけないのだろう。


「それは…遊に彼らとの記憶がないからよ。」
「え、そんな…!!」


納得出来なくて乱菊さんに相談したら、事の真相を話してくれた。
大切な人を助けただけなのに…どうして遊さんが…。

お昼過ぎ、そろそろひと息ついてもらおうと隊長が現世から持ってきた珈琲を淹れて持っていくことにした。
隊首室に入ると今日もまた勿忘草の花を愛おしそうに、でも少し寂しそうに愛でていた。


「隊長、珈琲淹れました。」
「おおきに。」
「……」


切なそうな隊長をたまに見るたびに私も心が痛んだ。
いつもふざけたりしながらも、仕事はしっかりとやってくれてとても頼りになる隊長にこんな一面もあると言うことは、きっと五番隊では副隊長の私だけだと思う。

何か力になりたい考えていた時、その日は突然やってきた。


「雛森副隊長、少しお時間よろしいでしょうか?」
「伊勢副隊長、に京楽隊長…?私に何かご用でしょうか?」
「うん、皆にちょっとお願いがあって、一人一人回ってるところで、雛森くんが最後でこんな時間になってしまって申し訳ないね。」


いえ…と一言返したけど、隊長が一人一人に直接頼み事をしに回るなんて何かあったのだろうか…。


「明日、遊ちゃんが復帰することになったんだよ。」
「!…よかった…。」


これで隊長と遊さんが会える機会が出来る!そう思った時だった。


「聞いているとは思うんだけど、遊ちゃんには彼らとの記憶が無くてね。一先ずこの事は平子くんには内緒にしてもらえるかな?」
「え…」
「あとでボクから説明するからさ?」


そんな京楽隊長にかしこまりましたとしか言うことが出来なかった。

だけど、一晩考えても私は純粋に愛する人との再会を切願する隊長を思うと秘密にすることは出来なかった。

それが良かったのか悪かったのかは分からない。けど、遊さんが教えてくれたんだ。


「やらないで後悔するよりやって後悔する方が、100倍いいです。」
「他の人がやめた方がいいと言っていてもですか?」
「はい。…自分で決めたことには責任を持つしかない。でも、人から決められたことは誰かのせいにしたくなるから…。」


―最後に笑える後悔の方を。

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